日本音楽著作権協会(JASRAC)は2016年9月14日、公正取引委員会から受けた排除措置命令の取り消しを求めて同委員会に申し立てた審判請求(2009年4月28日付け)を9月9日に取り下げたと発表した。

 公取委は、JASRACが放送事業者と結んでいる「包括的利用許諾契約(包括契約)」が放送利用についての管理楽曲の利用許諾分野における競争を実質的に制限しているという判断から、JASRACに対し排除措置命令を2009年2月に行った。JASRACはこれを不服として、排除措置命令の取り消しを求める審判請求の申し立てを行っていた。

 JASRACは、審判請求を取り下げた理由の一つとして、放送事業者の間で利用楽曲の全曲報告が広く行われるようになり、排除措置命令が求める放送事業者ごとの利用実績に基づく利用割合の算出が可能となった点を挙げている。さらに5者協議(イーライセンス、ジャパン・ライツ・クリアランス、JASRAC、日本放送協会、日本民間放送連盟の合計5者が文化庁の立会いの下で行った協議)において、2015年度分以降の放送使用料に適用する利用割合の算出方法について合意したことにより、排除措置命令が問題とした状況が既に事実上解消されつつあることも取り下げの背景にあるという。

 このほかに、NexTone(ジャパン・ライツ・クリアランスと2016年2月に合併したイーライセンスが商号を変更)がJASRACに対する損害賠償等請求訴訟および審判への参加を取り下げたことや、審判請求を取り下げて本来の業務に全力を尽くすことが権利者・利用者など関係者を含む音楽著作権管理事業分野全体にとって有益であると考えたことを考慮し、今回の判断に至ったという。

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