富士通は2016年9月7日、東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設から、ニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」の実験用計算機システムを受注したと発表した。新システムは、演算性能、ディスク容量、データ転送速度を従来の約3倍に向上する。2017年3月に稼働する予定。

 今回発表した「スーパーカミオカンデ実験用計算機システム」は、スーパーカミオカンデの検出器にある約1万3000本の光電子増倍管から集められる膨大なニュートリノに関するデータを蓄積・解析するシステムで、検出器とともに研究施設の根幹となる。

 スーパーカミオカンデは、太陽ニュートリノや大気ニュートリノのほか、超新星ニュートリノなど数十年に1度、十数秒ほどしか訪れないケースも確実に観測する必要があるため、実験用計算機システムも24時間365日の安定稼働、高速な解析処理、1日あたり500GBに及ぶ膨大なデータを確実に格納することが求められる。また、数カ月~数年分のデータをまとめて再解析する際、過去の膨大なデータに高速アクセスできる必要がある。

 今回導入される新システムは、計算サーバーは、PCサーバー「FUJITSU Server PRIMERGY RX2530 M2」85台(170プロセッサー、2380コア)でクラスタシステムを構成した。SPECint_rate2006で10万7100と、従来の約3倍の演算性能を達成した。

 高速分散ファイルシステムは、PCサーバー「FUJITSU Server PRIMERGY RX2540 M2」8台、ストレージシステム「FUJITSU Storage ETERNUS DX200 S3」8台と「FUJITSU Storage ETERNUS DX100 S3」2台で構成し、実効容量は9PB。計算サーバーからファイルシステムへのデータ転送性能は8GB/s以上。

 また、光電子増倍管が捕らえた観測データは、同じ鉱山内に設置するPCサーバー「PRIMERGY RX2530 M2」40台、ストレージシステム「ETERNUS DX100 S3」1台に送られ、ノイズ除去を行った後、高速分散ファイルシステムに転送される。

 このほかにも、スケーラブルファイルシステムソフトウエア「FUJITSU Software FEFS(FEFS)」、HPCミドルウエア「FUJITSU Software Technical Computing Suite」などのソフトウエアをすべて同社製品で構成した。

 同社は、1993年から神岡宇宙素粒子研究施設に実験用計算機システムを導入している。実験用計算機システムは、観測データを蓄積してエネルギーや進行方向などを解析することが目的で、ニュートリノの性質を解明し、宇宙の初期に物質がどのように作られたかという謎に迫るほか、陽子崩壊現象の発見による大統一理論の実証を目指す。

「神岡宇宙素粒子研究施設」のWebサイト
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