個人認証やデータ保護技術を世界180カ国で展開している本社オランダのジェムアルトは2016年9月6日、自動車メーカーや製造業の企業向けに、ネットワークに繋がった自動車の不正利用や、工場の生産ラインで非正規品の製造などを防止する製品戦略に取り組むと発表した(写真1)。IoT(インターネット・オブ・シングズ)でクラウドやデバイスの情報セキュリティのほか、ソフトウエアのライセンス管理までを担う。

写真1●ジェムアルトのIoTビジネス収益化戦略
写真1●ジェムアルトのIoTビジネス収益化戦略
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 ネットを通じて自動車や工場設備などがデータをやりとりするIoTでは、なりすましによる不正利用や、ほかのデバイスへの不正接続の踏み台にされないようにする情報セキュリティの確保が課題だ。

 携帯電話のSIMカード技術で知られるジェムアルトは、2015年1月にデータ保護やソフトウエア著作権管理の技術を手がける米セーフネットを買収・統合した。これによってジェムアルトは、IoTで確実にデバイスを認証するプラットフォームや、ソフトウエアで収益化するライセンス管理の仕組みを提供するという。

 例えば自動車の分野では、メーカーなどで識別された正しいデバイスを通じて、ソフトウエアをアップデートできるようにする必要がある。工場設備では模造品の製造や、製品に組み込むソフトの改竄を防ぐことなども課題という。

 そのためジェムアルトは、IoT向けにハードウエア・セキュリティ・モジュール(HSM)を提供する。一般にHSMは、不正なデータ取り出しや書き換えを感知するとデータを抹消して秘密を守る「耐タンパー性」を備え、公開鍵暗号方式(PKI)の秘密鍵を生成したり保管したりするものだ。

 デバイスに割り振ったID(識別子)で認証する仕組みを組み込めば、非正規品ではソフトが作動しないといった対策ができるという。また、生産設備だけでなく作業員を含めたID管理で工場の生産効率を引き上げることもできるという。

 またジェムアルトは、デバイスメーカーなどがソフトで収益を得られるように仕組みを提供する。API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を利用して、ソフトの暗号化やコピー防止など知的財産の保護や、ユーザーが利用したい機能ごとのライセンス提供、利用状況をクラウドで収集して従量課金することも可能という。

 機能別ライセンスを応用すると、あらかじめ複数の機能を盛り込んだネットワーク機器などのハードウエアの出荷時に、ソフトのライセンスに応じて異なる機能を搭載できる。これによって機器の量産コストを削減する仕組みも可能になるという(写真2)。

写真2●共通ハードウエア製品で複数種類の製品を量産する仕組み
写真2●共通ハードウエア製品で複数種類の製品を量産する仕組み
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■変更履歴
記事公開時、仏ジェムアルトとしておりましたが、オランダの誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2016/09/13 12:00]