GMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)とマネーフォワードは2016年9月7日、請求書や会計の情報を活用した中小企業向けの新融資サービスを同年11月に開始すると発表した。マネーフォワードが手掛ける「MFクラウド請求書」や「MFクラウド会計・確定申告」のデータを基に、GMO-PGの子会社であるGMOイプシロン(GMO-EP)が信用リスクを判定、無担保融資を実行する()。米国などでは銀行が融資しにくい中小企業に対し、ビッグデータを使って貸し付けするスタートアップ企業が台頭しており、日本でも同様の動きが加速しそうだ。

図●GMOペイメントゲートウェイとマネーフォワードによる新融資サービス
図●GMOペイメントゲートウェイとマネーフォワードによる新融資サービス
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 今回の新融資サービスは、マネーフォワードが2016年4月に発表した中小企業向けの資金調達サービス「MFクラウドファイナンス」の第1弾という位置づけ。ユーザーの許諾を得た上で同社は、EC(電子商取引)事業者向けのオンライン融資で実績を持つGMO-EPに対して請求書データや会計データを開示、GMO-EPが与信審査や実際の融資を担う。審査に要する期間は最短即日、最初の融資実行に掛かる期間は最短5営業日。融資の申し込みはオンラインで完結する。MFクラウド請求書とMFクラウド会計・確定申告を併用するユーザーが対象で、金融機関の融資サービスなどで一般的な決算書などの追加書類を必要としない。融資額や利率は現時点で非公表だ。

 「ずっとやりたかった分野。1年半かけて仮説検証を繰り返し、ようやく勝算が見えた」。GMO-PGの村松竜取締役副社長は、こう意気込む。今回、マネーフォワードと共同で、請求書データと会計データを組み合わせた独自の与信モデルを構築した。請求書データからは、融資対象企業の事業規模や安定した取引の有無などが分かる。さらに過去の会計データを分析することで、請求に対する回収率などを確かめることが可能だ。「(決算書などをベースに融資する)銀行がリーチできなかった企業の資金調達ニーズに満たせる」と、マネーフォワードの辻庸介代表取締役CEO(最高経営責任者)は語る。

 GMO-PGの子会社であるGMO-EPは2015年3月、決済代行契約を結ぶEC事業者向けに、「GMOイプシロン トランザクションレンディング」の提供を開始している。今回、マネーフォワードと提携することで、契約するEC事業者以外への融資業務にも踏み出す格好だ。「請求書情報が分かれば、ほぼ全ての資金の流れを把握できる」と、GMO-PGの村松副社長は説明する。「独力ではできないサービス。大規模なユーザーを抱え、テクノロジーに優れたパートナーが必須だった」(GMO-PGの村松副社長)。

 マネーフォワードにもメリットがある。「MFクラウド」ユーザーの資金需要ニーズに応えることで、サービスの付加価値を高められるからだ。同社は「MFクラウドファイナンス」の発表時、GMO-PG以外にも複数の金融機関と協業する旨を打ち出している。今後、他の金融機関による新たな融資サービスの開発が活発になる可能性がある。

 新しい融資の形を模索する動きは、日本でも盛んになりつつある。freeeは2015年12月、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など11の銀行と新たな融資サービスを開発すると発表した。アカウンティング・サース・ジャパン(ASJ)は住信SBIネット銀行と業務提携し、財務データを基にしたオンライン融資の提供を目指している。