NECと東京大学は2016年9月2日、AI(人工知能)の活用によって社会の課題を解決するためのパートナーシップ「NEC・東京大学フューチャーAI 研究・教育戦略パートナーシップ協定」(以下、フューチャーAI戦略協定)を開始した(写真)。第一弾の活動として、脳の神経回路を模倣した専用のアナログ回路を開発するための「ブレインモルフィックAI技術」を共同で研究する。3年後をめどに一定の成果を出す。
「これまでの産学連携は現場レベルで行われており、投資額も数百万円の小規模のものが多かった。今回はAIで社会の課題を解決するという大きな話で、組織同士がコミットメントしている」(NECで代表取締役執行役員社長兼CEOを務める新野隆氏)。NECは、今回の協定に億円単位の研究費用を投資し、研究者を派遣する。成果を基に事業化を推進する。人材育成にも取り組み、優秀な博士学生に対して奨学金を給付する。
研究開発の第一弾では、脳の神経回路を模倣した専用のハードウエアを開発する(図)。「現在のAIは、クラウドで大規模な計算パワーを使っており、大量の電力を消費する。一方で、人間の脳は20ワットしか電力を使っていない」(江村氏)。脳を模した専用のハードウエアを実装することで、手元にある小型のデバイスでAIを処理できるようになる。「大規模クラウドと比べて電力効率を1万倍以上にできる」(江村氏)。
ブレインモルフィックAI技術の研究部門は、東京大学に置く。生産技術研究所の合原一幸教授を中核に、研究者を集める。NECから派遣する研究者を含めて、10人以上をコロケートする。
NECは、AIに関連した最近の産学連携の例として、2016年4月に大阪大学と共同で、脳型コンピューティングを研究する「NECブレインインスパイヤードコンピューティング協働研究所」を開設している(関連記事:NECと大阪大学、脳型コンピューティングの共同研究を開始)。