クラウド会計ソフト事業を手掛けるfreeeは2016年8月31日、「AIとデータプラットフォームがもたらす世界~Fintech、HRtechの最新事例と合わせて~」と題したメディア向け勉強会を開催した。

 代表取締役の佐々木 大輔氏は、「FinTech(金融)、HRTech(人事)、Agri-Tech(農業)、RE-Tech(不動産)、Edu-Tech(教育)、Legal-Tech(法律)など、xTechと呼ばれるテクノロジーと産業が融合する流れが、多くの業種で進行している」と指摘した(写真1)。

写真1●freeeの代表取締役 佐々木 大輔氏
写真1●freeeの代表取締役 佐々木 大輔氏
(撮影:大類 賢一、以下同じ)
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 佐々木氏は、「xTechの神髄は、世の中ですでに期待されているユーザーのエクスペリエンスと、実際に提供されるサービスとのギャップを埋めることにある」と語る。

 例えば、Eコマースでは翌日あるいはその日のうちに購入した商品を受け取ることが可能、とユーザーは認識している。ところが、海外に現金を送金しようとすると、銀行に行き、高い手数料を払う必要がある。数日のタイムラグも発生する。

 送金は、実際にはお金を運ぶわけではないのに、ECサイトで購入するよりも時間と手間がかかる。「そのようなギャップを埋めるのが、FinTechだ」と佐々木氏は説明する。

 一方で、クラウドによってxTechのサービスを提供すると、サービス事業者には多くのデータが蓄積される。その蓄積されたデータをAIで活用することで、ビジネスに「正のループ」を生む。

 そのループは、4つのステップからなるフレームワークになる、と佐々木氏は解説する(写真2)。ステップ1は、UX(ユーザー体験)革命だ。xTechによって、ユーザーが持つ理想と現実のギャップを解消する。

写真2●xTechによって生まれる、4ステップからなるフレームワーク
写真2●xTechによって生まれる、4ステップからなるフレームワーク
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 ステップ2「グロース」では、ギャップを解消することで利便性が高まり、それが新たなユーザーを引きつけ、ユーザー数増加によってさらに利便性が高まっていく。

 ステップ3「データの蓄積」では、事業者に大量のデータが蓄積されていく。これまでデータ化されにくかったデータが、事業者に集まる。

 ステップ4「AIのビジネスパートナー化」では、蓄積されたデータをAIが活用し、人間を支援する。AIは、データが多く集まるほど真価を発揮。これにより人間は、人でなければできない創造的な活動に注力できる。

 「このフレームワークは、どの業界にも通用すると期待している」と佐々木氏は話す。