ヤマハ発動機はサイボウズの業務アプリケーション構築クラウドサービスである「kintone」などを使い、販売店向けコールセンターシステムをパブリッククラウド上に移行した()。開発を手掛けたアールスリーインスティテュートとサイボウズが2016年8月30日に発表。同6月より運用を開始している。

図●ヤマハ発動機が構築した販売店向けコールセンターシステムの概要
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図●ヤマハ発動機が構築した販売店向けコールセンターシステムの概要

 ヤマハ発動機がコールセンターシステムをクラウド上に移行したのは、BCP(事業継続計画)が目的だ。オンプレミス(自社所有)環境で稼働していた同システムは老朽化が進んでおり、2014年9月に見直しの検討を始めた。同システムを稼働させている静岡県袋井市は、「南海トラフ地震防災対策推進地域指定市町村」に指定されており、万が一の災害時の対応が課題となっていた。

 南海トラフ地震に備えるため、同社はコールセンターシステムをパブリッククラウド上に移行することにした。クラウド化によりデータ消失のリスクを減らし、被災後も迅速な業務復旧が可能と考えたからだ。

 複数のサービスを検討した結果、従来のシステムと比べて画面や操作性について現場の違和感なく移行できると判断し、kintoneを採用した。開発パートナーに選定したアールスリーインスティテュートは、ヤマハ発動機の担当者の目の前でシステムの開発や改修をする対面開発の手法で開発を進めた。この結果、2016年3月から3カ月でシステムのクラウド移行を実現している。

 新システムでは、顧客からの電話による問い合わせを、リンクが提供するクラウド型のPBX(構内電話交換機)サービス「BIZTEL」で受ける。kintoneはBIZTELが受けた電話番号を確認し、顧客情報や過去の問い合わせ記録を自動で呼び出す。バックアップとして米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のWindowsのクラウド型仮想デスクトップサービス「Amazon WorkSpaces」を使い、オペレーターの画面も用意した。

 kintoneやBIZTELなどのクラウドサービスにより、設備を持たないコールセンターを構築できた。オンプレミスでシステムを刷新する場合と比べて75%の費用を削減できたという。