写真 「Kindle Unlimited」の画面
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(出所:アマゾン ジャパン)
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写真 友田雄介Kindle事業本部コンテンツ事業部事業本部長
写真 友田雄介Kindle事業本部コンテンツ事業部事業本部長
(出所:アマゾン ジャパン)
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 アマゾン ジャパンは2016年8月3日、月額980円で電子書籍が読み放題になる新サービス「Kindle Unlimited」を開始した。日本語で書かれた12万冊以上の小説・コミックのほか、雑誌の最新号なども楽しめる。料金を気にせず何冊でも読める点を熱心な読者ファンを中心に訴求し、国内電子書籍市場の拡大に弾みを付ける。

 既に米国や英国などで提供しているもので、日本は12カ国目。閲覧に使うアプリや購入時にアクセスする電子書籍ストアは従来サービスと共通で、ストアに並ぶ作品のうち専用ロゴのある作品だけが読み放題になる。ロゴがない作品は、従来通り単品で購入できる。

 12万冊のうち、小説が1万6000冊、ビジネス書が8000冊、実用書やノンフィクションが2万冊、コミックが3万冊以上ある。雑誌は240誌で、最新号のほかタイトルによってはバックナンバーも読める。

 先行する米国では、Kindle Unlimitedの提供開始後、契約者の読書時間は平均で3割増えただけでなく、電子書籍の購入額も3割増えたという。「読んだことがなかったベストセラーや隠れた名著などとの日常的な接点が生まれた。結果として書籍と向き合う時間が拡大した」(日本法人の友田雄介Kindle事業本部コンテンツ事業部事業本部長)。知的好奇心がくすぐられ、読み放題の対象ではない単品売り電子書籍などにも手を伸ばす風潮を産み出すことに成功したとする。

 スマートフォンやタブレット、電子書籍リーダーなどにダウンロードできるのは10冊まで。読み終わったものを削除すると他の書籍をダウンロード可能になる。新サービス開始に当たって、米アップルのiOS向けアプリを一新した。これまで電子書籍を購入するには、アプリを離脱しWebブラウザーを使ってストアにアクセスする必要があったが、Kindle Unlimitedの対象作品についてはアプリ内で直接ダウンロードできる。

 アマゾン ジャパンは、現在46万5000冊の電子書籍を単品売りで扱う。電子書籍サービスを開始した2012年10月時点では5万冊だった品揃えを、4年弱で約9倍に増やしたことになる。「超ベストセラーでも数百万人しか読んでない。大半の消費者はその素晴らしさに触れていない。多くの人々に良書との出会いを定額サービスで演出したい」(友田事業本部長)。

 出版科学研究所によると、国内電子書籍市場は2015年、前年比31.3%増の1502億円となり右肩上がりの成長が続く。読み放題サービスはそのけん引役を担うと期待する声が大きい(ITpro関連記事:アマゾンの電子書籍読み放題、日本上陸は福音か凶報か)。これまで携帯電話会社などが先行してきたが、コミックや雑誌に限定したものなどが大半。アマゾンはジャンルの広さと豊富なラインアップで競合を圧倒したい考えだ。

 今後は、電子書籍の売り上げランキングを公表する際にはKindle Unlimitedでのダウンロード数も加味する。読み放題ならではの人気作品の存在を周知し、さらなるヒットを仕掛けやすくする。定額サービスが著者に対して新たな収益確保の機会を設けるものであることをアピールするとともに、Kindle Unlimitedに作品を提供していない出版社に対しても参加を呼びかけていく。