国連の経済社会局(UNDESA)は2016年7月29日、電子政府の調査の結果として「世界電子政府ランキング」を発表した()。ランキングは2年ごとに発表しており、日本は前回2014年の6位から11位に後退し、2期連続のトップ10入りを逃した。1位は前回の8位から躍進した英国。2位は前回と同じくオーストラリアだった。2010年調査から3期連続でトップだった韓国は3位となった。

表●国連電子政府ランキングの上位20カ国の変遷
表●国連電子政府ランキングの上位20カ国の変遷
出所:UNDESA。2014年と2016年の国名の横はスコア(EGDI:e-government development index)。2016年は対2014年の順位変動も記載
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 電子政府ランキングは、国連加盟193カ国を対象に2年ごとに実施している。オンラインサービス、通信インフラ、人的資源の3分野の個別指標から「電子政府発展度指標」(EGDI:e-government development index)を算出してランキングしている(得点範囲は0.0~1.0)。

 日本は、前回の2014年調査では、前々回2012年の18位から一気に初のトップ10入りを果たした。オンライン申請によるペーパーレス化の目標設定や、マイナンバーに基づく行政機関・自治体のバックオフィス連携の計画などが評価されたようだ。今回の報告書では日本に関する具体的な言及が少なく、6位から11位へと順位を下げた理由は明記していない。

 ただ、3期連続の1位から3位に後退した韓国について報告書は、2016年末に750超の電子政府サービスのクラウド化を計画し、2017年までに60%超のクラウド化を完了する点などを挙げ、「ランキングの低下は必ずしも他国より劣ったことを意味するのではなく、引き続きリーダーの地位にある」と評価している。日本の順位の低下も、取り組みが後退したわけではなく、英国や北欧諸国(フィンランド、スウェーデン、デンマーク)の取り組みが加速したのが原因と言えそうだ。英国やデンマークについては、行政サービスを原則としてオンラインで提供する「デジタル・バイ・デフォルト」の取り組みなどが高く評価されたようだ。

 1位に躍進した英国は、HTML5などの新しいWeb技術の採用のトレンドをけん引している点や、2014年に行政事務のデジタル化により17億ポンドの経費を削減した点、税務申告の85%がオンライン経由になったり自動車運転試験の98%超がオンライン予約になったりしている点も評価ポイントとして挙げられた。前回に続き2位だったオーストラリアは、ワンストップ国家ポータルの先進国の一つであり、中央政府も地方政府も安全なシングルサインオンで多様な双方向型サービスを提供している点に加え、2015年7月に首相職の下に「デジタル・トランスフォーメーション・オフィス」を設置した点などが評価された。

 なお、電子政府ランキングとは別に発表している「電子行政参加(e-participation)」のランキングでは、日本はオーストラリアと並んで2位だった。1位は英国、4位は韓国、5位はオランダとニュージーランド。日本は前回2014年はフランス・英国と並んで4位だったので、少し順位を上げた。

 こちらはインターネット経由の情報提供や、オンラインでの意思決定参加などが評価項目となっており、日本政府が2014年以降に注力してきたオープンデータ化の推進戦略などが評価を受けた可能性がある。

「国連電子政府ランキング」の発表資料(英文)