写真●「Oracle OpenWorld 2015」で講演する米OracleのLarry Ellison会長
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 米Oracleは2016年7月28日(米国時間)、ERP(統合基幹業務システム)のクラウドを手がける米NetSuiteを93億ドル(約9750億円)で買収すると発表した。NetSuiteは赤字が続いているが売上高は7億4114万ドル(2015年12月期)で、ERPのSaaS(Software as a Service)事業者としては最大である。

 OracleのLarry Ellison会長兼CTO(最高技術責任者)は2016年6月16日に発表した2016年5月期の決算プレスリリースで「OracleはSaaSとPaaS(Platform as as Service)の売り上げが100億ドルに達する最初のクラウドカンパニーになる」と宣言しており、Oracleが近いうちにSaaS/PaaS事業者の買収に動くのではないかと見られていた。Oracleの2016年5月期におけるSaaS/PaaS売上高は前年比49%増えたものの22億ドルに過ぎず、PaaS最大手である米Salesforce.comの2016年1月期における売上高の66億6700万ドルには遠く及んでいなかったためだ。

 1998年に創業したNetSuiteは、全世界で3万社以上の顧客を抱え売上高も年率30%台で成長している。NetSuiteを買収することでOracleはSaaSの売上高を大きく増やすことができる。NetSuiteのサービスはOracleによる買収後も継続する。

 もっともOracleによるNetSuiteの買収は、大きな波紋を呼びそうだ。NetSuiteは創業時にOracleのEllison氏の出資を受けており、今もEllison氏とその家族がNetSuite株式の45.4%(2016年3月31日時点)を所有しているためだ。今回の買収によってEllison氏が得る金額は40億ドルを超える。

 またNetSuiteの売上高は成長が続いているが、損益面では2007年の上場以来、一貫して赤字が続いている。2015年12月期の年間業績は売上高が7億4114万ドル(前年同期比33.2%増)で純損失は1億2474万ドル。直近の四半期決算である2016年4~6月期の業績は、売上高が2億3077万ドル(同30.1%増)で純損失は3774万ドルだった。2016年4~6月期の累積赤字(Accumulated deficit)は7億4143万ドルで、年間売上高に匹敵していた。