日本IBMは2016年7月26日、人工知能(AI)技術の「Watson」をIoT(インターネット・オブ・シングス)に活用するクラウドサービス「Watson IoT Platform」の事業戦略説明会を開いた。データ収集、分析などの機能をクラウド上から提供する。日本IBMは同事業のパートナー支援策も同時に発表。年内に100社の獲得を目指すとした。

 Watson IoT Platformは、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の「Bluemix」上に構築されたPaaSだ。センサーデータの収集、分析やデバイス管理などの機能を持つ。ユーザー企業は自動車や家電製品などに合わせた、専用のアプリケーションを開発できる。日本IBMは3月1日、Watson IoT Platformの開発のための専任組織である「Watson IoT 事業部」を設立している。

写真1●日本IBM Watson IoT事業部 事業部長の林健一郎 理事
写真1●日本IBM Watson IoT事業部 事業部長の林健一郎 理事
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 説明会に臨んだ、日本IBM Watson IoT事業部 事業部長の林健一郎 理事は「自動車や家電製品など、製品や業種に特化したアプリケーションを構築しやすくする」と、狙いを話した(写真1)。具体的な売上高の計画や開発投資額などは明らかにしなかったが「IBMのIoT事業は、Watson IoT Platformが中核になる」(林理事)とした。

 Watson IoT Platformを構成するのは製品や業種に特化した六つのソリューション(写真2)。自動車向けの「IoT for Automotive」、家電製品など向けの「IoT for Electronics」、保険業向けの「IoT for Insurance」、産業機器向けの「IoT for Industry Products」、小売業向けの「IoT for Retail」、通信業向けの「IoT for Telecom」だ。

写真2●製品や業種に特化した6つのソリューションが、Watson IoT Platformを構成する
写真2●製品や業種に特化した6つのソリューションが、Watson IoT Platformを構成する
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 このうち既に正式提供開始されているのは、自動車向けのIoT for Automotive。5月に提供開始した。アクセルやブレーキなどの稼働履歴や位置情報、地図データなどの管理や分析の機能を搭載する。安全運転や部品の故障予知などのアプリケーションを、開発できるという。

 IoT for Electronicsはベータ版が公開されている。その他は、2016年下期から2017年にかけて順次提供開始される予定だという。

 日本IBMは同日、Watson IoT Platformを使ってIoTのサービスやシステムを構築するパートナー企業の支援プログラム「Watson IoT Platform パートナーエコシステム」も開始した。プログラムの参加企業は、日本IBMから技術指導やマーケティング支援などを受けられる。開始時点で17社の企業が参加。「2016年内にパートナー100社の獲得を目指す」(林理事)。