早稲田大学ビジネススクール 早稲田大学大学院 准教授の入山章栄氏は2016年7月22日、東京・目黒のウェスティンホテル東京で開催した「第4回イノベーターズ会議」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)で講演した(写真1)。講演の題目は「世界最新の経営学から見るイノベーション創出への示唆」。

写真1●早稲田大学ビジネススクール 早稲田大学大学院 准教授の入山章栄氏
写真1●早稲田大学ビジネススクール 早稲田大学大学院 准教授の入山章栄氏
(写真:井上 裕康)
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 「世界標準の経営理論で主流になっている考え方、特にイノベーションの創出をテーマにして講演する」。入山氏はこう切り出した。

 入山氏は「世界標準」というキーワードを強調した。「国際標準化が進んでいる経営学において、日本はガラパゴス化している」(入山氏)ためだという。同氏によれば、2015年にカナダで開かれた経営学の世界大会に、日本から参加したのは33人だった。大会全体の参加者は1万642人。「日本の割合がわずか0.3%」(入山氏)。

 世界標準の経営学は、なるべく多くの企業やビジネスパーソンに当てはまる経営理論を目指している。「個々の企業の事例を中心に考えるというよりは、普遍的な法則を求める」(入山氏)。そのために、統計解析のような、データを使った科学的なアプローチが主流になっている。

イノベーションは両利きで

 科学的なアプローチとして入山氏は講演で、心理学的なアプローチと社会学的なアプローチを紹介した。

 まず心理学的なアプローチだ。「イノベーションとは、ゼロから生みだすものではなく、既存の知と知の組み合わせだ」(入山氏)。一見全く新しいと思われるような、新規事業や業務改善のアイデアなども「頭の中のどこか片隅にある、既存の知を基にしている」(入山氏)という。この「既存の知」に新しいアイデアを組み合わせることがイノベーションにつながる。

 ただ認知心理学によれば「人間は眼の前にある知だけを組み合わせる」(入山氏)ため、イノベーションが生まれにくい。