アビームコンサルティング デジタルトランスフォーメーション ビジネスユニット BIセクター セクター長 プリンシパル 執行役員の室住淳一氏
アビームコンサルティング デジタルトランスフォーメーション ビジネスユニット BIセクター セクター長 プリンシパル 執行役員の室住淳一氏
写真:井上 裕康
[画像のクリックで拡大表示]

 「AIの価値を見極めるには、まずAIの基礎研究を知ることだ」。2016年7月22日、東京・目黒のウェスティンホテル東京で開催した「第4回イノベーターズ会議」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)で、アビームコンサルティング執行役員の室住淳一氏が登壇した。

 「AI・機械学習がビジネスを変える~バリューチェーン改革への挑戦~」と題する講演で、室住氏はまず「AIは(企業のITに)本当に使える?」と参加者に問題提起した。

 自動運転、株式取引、囲碁といった分野でAIが華々しく活躍している一方、企業ITの現場では「簡単に悪用されるのでは?」「POCは多いけど本実績は少ない」といった心配事が多い。「企業のITは、常にアグレッシブとはいかない。1つのトラブルが企業の存続を危うくする。『うちもAI』とすぐには言いづらいだろう」(室住氏)。

 室住氏は、企業がAIの価値を見極めるためには、AIの基礎研究に直接触れる機会を設けることが重要だとする。「例えばFinTechの分野で、三菱UFJフィナンシャル・グループはシリコンバレーに行員を常駐させ、アカデミアと情報交換している。日本と米国では議論に数カ月の時差があるため、シリコンバレーに拠点を置いてキャッチアップし、顧客サービスにつながる技術を探している」(室住氏)。

 AI技術を企業ITに組み込むには、新興企業や研究機関との交流、ICML(機械学習学会世界大会)など国際学会への参加を通じ、最先端の研究成果に触れることで、技術の成熟度を確かめる必要があるという。

 「例えば、あるAI技術について『エラー率が30%』という研究があったとき、ある業界なら『7割当たるとはすごい』と解釈できる一方、別の業界は『3割エラーでは使い物にならない』と解釈するかもしれない」(室住氏)。技術の成熟度について生の情報に触れることで、AIを企業のITにどこまで取り込めるか、判断しやすくなるという。

 AIをビジネスに取り込む一例として、アビームでは現在、コンサルティングサービスに機械学習を取り入れた「AIコンサルティング」を展開している。

 通常のコンサルティングでは、まず仮説の設定から入り、それを裏付けるデータを収集する。AIコンサルティングでは、まずデータを収集し、AIに仮説を探索させる。これにより、短いサイクルで即効性のある施策を実施できるという。

 室住氏は最後に「AIは、バリューチェーン改革に活用できる。AIを積極的に生かすための応用研究を、他社に先駆けて進めるべきだ」として講演を締めくくった。

■変更履歴
当初記事で「三菱東京UFJ銀行」とあったのは、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」の誤りです。お詫びして訂正します。 [2016/7/25 15:15]