写真●ぐるなび、代表取締役社長の久保征一郎氏
写真●ぐるなび、代表取締役社長の久保征一郎氏
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 「飲食店にとって訪日外国人はお客さん。料理のメニューの中身をきっちり理解してもらった上で提供する義務がある」---。飲食店情報サイトを運営するぐるなびの久保征一郎社長(写真)は2016年7月20日、訪日外国人向けサービスの見本市「INBOUND JAPAN 2016(インバウンド・ジャパン 2016)」で講演し、国内の飲食店の情報を外国語で提供している同社の事例を紹介した。

 冒頭で久保氏は、調査データを引き合いにしながら訪日外国人に日本食を提供することの重要性を説いた。訪日外国人の最大の関心事は「日本食を食べること」(観光庁調査)であり、2位の「ショッピング」を上回る。経済規模も大きく、訪日外国人1人当たりの飲食費は約3万3000円(観光庁調査)で、2人合わせると日本人1人当たりの年間外食支出である約5万7000円(総務省調査)を上回る。

 こうした状況であるから、訪日外国人に対しては、レストランでの1日3回の外食を満喫してもらう必要がある。ところが、多くの観光客は日本の食文化に詳しくないため、訪日外国人向けのメニュー情報が必要になるという。例えば、「親子丼」などの日本での呼び名や、どんな料理なのかが分かる説明文、使っている食材、味付けの種類、といった情報を過不足なく記載する必要がある。

 講演では、飲食店情報サイトの外国語版「ぐるなび外国語版」の推移を中心に解説した。第一弾のぐるなび外国語版の開始は2004年のこと。メニュー情報などを4言語(英語、繁体字、簡体字、韓国語)で表示する。その後、サイトの運営から見えてきた課題を解決した新サイトとして、2015年1月に現在のサイトへとリニューアルした。

メニュー情報をDB化して外国語ページを自動生成

 2004年に始めた初期版のぐるなび外国語版の特徴は、店舗側で作成した日本語の情報をベースに、外部の翻訳業者に頼んで外国語へと翻訳して制作していたことである。このやり方には課題があったと久保氏は振り返る。

 まず、翻訳時間と翻訳コストがかかってしまう。さらに、翻訳されたメニュー名から料理を想像することが難しいといった問題があった。翻訳者の数だけメニュー名が存在し、例えば「親子丼」の翻訳で「parent and child bowl」というメニュー名が実在する。

 2015年にリニューアルしたぐるなび外国語版の特徴は、「翻訳しないこと」(久保氏)。店舗担当者が管理画面からマウスで選択肢を選ぶだけで、標準化された技法による外国語ページを作成できるようにした。「メニュー名を見て料理を想像できるように、メニュー名のための変換辞書テーブルを用意した」(久保氏)。

 講演では実際に、ぐるなび外国語版の画面イメージ(画面1)と、店舗担当者向けの管理画面(画面2)をデモンストレーションして見せた。

画面1●ぐるなび外国語版の画面イメージ。「串盛り合わせ」を表示している
画面1●ぐるなび外国語版の画面イメージ。「串盛り合わせ」を表示している
出所:ぐるなび
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画面2●ぐるなび外国語版の店舗用管理画面のイメージ。メニュー名や説明文だけでなく、食材や調理方法などの情報をマウスで選んで設定できる
画面2●ぐるなび外国語版の店舗用管理画面のイメージ。メニュー名や説明文だけでなく、食材や調理方法などの情報をマウスで選んで設定できる
出所:ぐるなび
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 管理画面では、画像を登録し、日本でのメニュー名と読み方(カタカナ、ローマ字)を日本語で入力し、900万件あるメニュー情報データベースからドリルダウン形式でメニューを選択する。すると、メニューの説明文、食材情報、味付け情報、などの情報が標準で選択されるので、必要に応じてカスタマイズする。

 ぐるなび外国語版は多くの価値を生んだと久保氏は自賛する。まず、訪日外国人の視点では、食べたいメニューが置いてある店を簡単に探せる。「メニュー情報がしっかりしていると、安心して頼める」(久保氏)。

 一方、飲食店から見ると、外国人から見て分かりやすいページを、日本語とマウス操作だけで簡単に作れる。さらに、Webページを印刷して店に置いておいたり、タブレットPCでサイトを表示してメニューブックとして活用できる。「訪日外国人はお客さん。しっかりと食べたいものを食べられることが何よりも大切。メニューの中身をちっきり理解してもらわなければならない」(久保氏)。