写真1●ソフトバンクグループの孫正義社長
写真1●ソフトバンクグループの孫正義社長
(出所:ソフトバンクグループによるWebキャスト)
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 「次のパラダイムシフトであるIoT(インターネット・オブ・シングズ)に将来を賭けた」。ソフトバンクグループの孫正義社長(写真1)は2016年7月18日(英国時間)、英ロンドンで記者会見を開き、英ARM Holdingsを約240億ポンド(約3.3兆円)で買収する理由などを語った(関連記事:ソフトバンクが英ARMを約3.3兆円で買収へ) 。

 孫社長はソフトバンクグループが、テクノロジーの大きなパラダイムシフトが始まる初期に、必ず大きな投資をしてきたと説明する(写真2)。PCが登場した1980年代にはソフトウエアの流通会社としてソフトバンクを起業し、PCインターネットが登場した1990年台半ばには米Yahoo!に出資。PCブロードバンドが登場した2000年代始めには「Yahoo! BB」を開始し、モバイルインターネットが登場した2000年台半ばには英ボーダフォン日本法人を買収した。

写真2●ソフトバンクグループが過去に大きな投資をしてきたパラダイムシフト
写真2●ソフトバンクグループが過去に大きな投資をしてきたパラダイムシフト
(出所:ソフトバンクグループ)
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 孫社長はIoTがこれらに匹敵するパラダイムシフトだと主張し、「(スマートフォンなどの)モバイルだけでなく、家電、自動車、インフラストラクチャーなどあらゆるモノに半導体が搭載されるIoTの時代に、ARMプロセッサの出荷個数や売り上げは爆発的に増加する」として、ARM買収を決断したと述べた。

買収交渉の開始は2週間前

 記者会見で孫社長は、ARMに対する「あこがれ」は10年前から抱いていたが、買収交渉を開始したのは2週間前だと述べた。この時期にARM買収を提案した理由を述べる中で、孫社長は英国が欧州連合(EU)離脱を決めたBrexit(ブレグジット)とは無関係であると強調。「中国Alibaba.comの株式を一部売却するなどして現金を確保できたことが最大の理由だ。これまでは買収を行おうにも現金が無かった」と説明した。

 ソフトバンクグループはARMを買収した後、ARMを完全子会社化し、ARMの上場を廃止する。買収後もARMは独立した企業として存続させ、本社も英ケンブリッジに維持する。「ケンブリッジ周辺にはARMプロセッサに関連する良好なエコシステムが形成されている」(孫社長)ことが、その理由だ。また5年以内にARMの英国における従業員数を2倍にするとし、「これは単なる意向ではなく、コミットメントだ」(同)と強調した。

 ARMプロセッサは2015年の時点で、スマートフォン向けプロセッサ市場で95%、スマホやタブレットとノートパソコンを合算したモバイル向けプロセッサ市場で85%の市場シェアを、それぞれ確保している。孫社長は今後の有望市場として「自動運転車向けのプロセッサ市場」と「サーバー市場」を挙げた。

 自動運転車向けにプロセッサ市場に関して孫社長は、「自動運転車を実現するためには、通信や機械制御などさまざまな機能を実現するプロセッサが必要であり、成長機会は非常に多い」とした(写真3)。

写真3●自動運転車におけるARMプロセッサの成功機会
写真3●自動運転車におけるARMプロセッサの成功機会
(出所:ソフトバンクグループ)
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 またサーバー市場に関しては「ソフトバンクグループでもクラウドを運営しているが、その最大のコストは電力。ARMアーキテクチャによって省電力が実現できることが大きい」とコメントした。