写真●情報通信総合研究所 ICT創造研究部 第一グループ ICT基盤研究部 第一グループの清水憲人 主任研究員
写真●情報通信総合研究所 ICT創造研究部 第一グループ ICT基盤研究部 第一グループの清水憲人 主任研究員
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 情報通信総合研究所は2016年7月14日、報道関係者向けにバーチャルリアリティ(VR)をテーマにした勉強会を開いた。勉強会の題目は「仮想現実(VR)技術の現状と今後の可能性」。2016年にVR市場が立ち上がり始めた要因や、米フェイスブックや米グーグルが進めるVRへの投資動向などについて解説した。情報通信総合研究所 ICT創造研究部 第一グループ ICT基盤研究部 第一グループの清水憲人 主任研究員が講師を務めた(写真)。

 清水氏によれば「2016年はVR市場が立ち上がる可能性のある年」だ。2015年末から2016年上期にかけて、ベンチャー企業の米オキュラスVRの「Oculus Rift」や、韓国サムスン電子の「Gear VR」、台湾HTCの「HTC Vive」などのヘッドマウントディスプレー(HMD)製品が続々と市場に投入され始めたからだ。高くても10万円程度で、一般消費者でも購入できる価格帯だ。

 バーチャルリアリティという言葉が広く使われ出したのは、1989年まで遡るという。VR技術開発の米VPLリサーチが、HMDを使ったVR技術のデモを展示したことがきっかけとなった。「HMDの外見は、現在市場に流通しているものと変わらないが、当時は価格が10万ドル程度と高価だった」(清水氏)。

 1989年当時は、HMDの映像を描画するGPUの性能が十分ではなかった。「コマ送りのような映像になってしまっていた。現在市場に流通しているHMDは描画性能も上がり、実用化まで近づいている」(清水氏)。このほか全天球型カメラの普及なども、VR市場の立ち上がりに寄与するという。代表的な製品がリコーの「RICOH TEHTA S」だ。360度の映像を撮影できる。

 調査会社などの市場予測を見ると、VR市場は2020年に700億~1200億ドルまで成長する。清水氏は現時点ではこうした将来の規模と比べれば、「ほとんどゼロ」といえるほど小さいと指摘。「2020年にかけて右肩上がりに成長するだろう」(清水氏)。

 清水氏は、米大手IT企業がこぞって、VRの技術開発に投資していることにも言及。フェイスブックは2014年にオキュラスVRを買収しているほか、グーグルは2015年にVR関連技術を開発するベンチャーの米マジックリープを買収している。このほか、米アップルと米アマゾン・ドット・コムは、VR技術を搭載した端末の特許を申請しているという。

 ただし「それぞれの企業が、マネタイズ可能だとして事業計画を作成しているかは不明」(清水氏)とする。それらのIT企業は、VR市場の立ち上がりに際して、技術開発競争に乗り遅れないように投資を進めている、との見解を示した。