日立製作所は2016年7月13日、製造業の工場で作業員の逸脱動作や生産設備の不具合を検知できる、画像解析システムを開発したと発表した(関連記事:日立とダイセル、作業員の逸脱動作や設備不具合の予兆を検出する画像解析システム)。化学品メーカーのダイセルと協力して開発した。工場内や生産設備内に取り付けた専用のカメラを使って、作業員や設備の異常な挙動を検知、作業員や現場監督者に知らせる。製品の品質向上や、生産設備の稼働率を向上させる効果を狙う。ダイセルは、同画像解析システムを国内外の工場に標準装備する計画も明らかにした。
日立は、今回開発した画像解析システムを、同社のIoT(インターネット・オブ・シングズ)活用のソリューション群「Lumada」に取り込む計画だ。2017年度に、その他の製造業の工場でも適用できるように汎用化して外販する。
日立とダイセルは2016年1月から、ダイセルの播磨工場(兵庫・たつの)に同画像解析システムを導入して実証実験を進めている。導入前の準備となる実証実験は、2015年2月から日立製作所の研究所内で進めてきた。
ダイセル 取締役 常務執行役員の小河義美 氏は「これまでは生産ラインの様子を熟練の監督者が監視してきた。これをシステムに置き換えられる」と話す(写真1)。播磨工場以外の海外6工場へ順次、導入を進める計画だ。
生産ラインの異常な挙動を検知
今回開発した画像解析システムの仕組みは次の通り(写真2)。まず、作業員や生産設備の動きを撮影した画像データをあらかじめ蓄積する。作業員の手や肘、肩などの関節位置や目線の動作を解析。生産設備については、稼働時の画像データに加えて、電圧や電流などのデータも合わせて解析する。
「これらのデータを基に、作業員や生産設備の標準的な動作モデルを作成する」(日立製作所 産業・流通ビジネスユニット 産業ソリューション事業部 産業製造ソリューション本部の森田和信本部長)。
工場内に同画像解析システムを導入すると、取り付けたカメラがリアルタイムに画像データを取得。あらかじめ作成した標準的な動作モデルに対して異常な挙動を示した場合は、作業員や監督者に対して通知する。作業員の作業に不備があったり、生産設備の不具合が発生したりするなどのトラブルを防ぐ効果があるという。