「2012年、IT人材の獲得に悩んでいたことがきっかけである小さなデジタルシフトを行った。それが社内にプラスに働き、変化を歓迎する社内風土を獲得できた」。2016年7月8日、「IT Japan 2016」(日経BP社主催)の講演に立ったHDEの小椋一宏代表取締役社長兼CTO(写真)は、このように語った。

写真●HDE代表取締役社長兼CTOの小椋一宏氏
写真●HDE代表取締役社長兼CTOの小椋一宏氏
(写真:井上裕康)
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 HDEは、Office 365やGoogle Apps、SalesforceといったクラウドサービスのユーザーIDやパスワードを一元管理したり、メールやデバイスのセキュリティを確保したりできるセキュリティ対策クラウド「HDE One」を提供している。2011年にサービスを開始してからユーザー数は順調に伸び、2016年5月現在、150万ユーザーが利用している。

 小椋氏が話す小さなデジタルシフトとは、海外にいる学生に向けて実施しているインターンシップ制度「HDE Global Internship Program」に関連したものを指す。

 2012年、HDE Oneの引き合いが急増。小椋氏はIT人材の確保に乗り出したものの、ソーシャルゲーム業界など競合が増えたことで、人材獲得は困難を極めた。「国内だけでは限界」とみた小椋氏は、海外に目を向けグローバル採用に踏み切った。

 小椋氏をはじめHDEの担当者は、東京・渋谷の本社から東南アジア諸国へ渡った。現地の有名理系大学を回り、リクルーティングを行った。すると、日本のアニメやゲームといった文化に詳しく、東京で働くことに強い関心を寄せている学生が多いことに小椋氏は気付いた。

 「そんなに東京に強い関心を持ってくれるのならば、東京に来てもらって、フルタイムで働く体験をしてもらおう」。そんな思いから、渡航費と滞在費もHDEで肩代わりする、HDE Global Internship Programを始めることにした。

 小さなデジタルシフトを起こしたのは、このときだ。インターンシップ制度のビラを配って募集したところ、応募が殺到。HDEの担当者たちは、電話や通話サービスのSkypeを使った面接に対応を追われた。