「IoTがデータの爆発を生む。コグニティブ技術がビッグデータに意味を与える。このことがさらにIoTを加速する。このループが世の中を大きく変える」――。日本IBMで執行役員グローバル・ビジネス・サービス事業ビジネスコンサルティングリーダーを務める池田和明氏(写真)は2016年7月8日、「IT Japan 2016」(日経BP社主催)で講演し、現代社会で起こっていることと事業への影響、企業が成すべき戦略について解説した。
講演では、経営者へのインタビュー調査から得られた知見をまとめたレポート「グローバル経営層スタディ」を踏まえ、「この世界に何が起こっているのか」(世界観)、「それが、企業の競争環境にどんな影響を与えているのか」(大局観)、「だから、何をすべきか」(戦略観)の三つを説明した。
グローバル経営層スタディは、米IBMが2002年に開始した経営者へのインタビュー調査レポートである。これまでに2万8000人を超える経営者に直接会ってインタビューしているという。2015年には、グローバルで5247人(日本人は576人)の経営者にインタビューし、得られた知見を最新の2016年版にまとめている。
世界観:IoTでデジタルデータの量が急増している
「デジタルデータの量が爆発的に増えている」。池田氏は、今社会で起こっていることを端的にこう捉える。
経営者への調査では、CEO(最高経営責任者)の関心事のトップは、2012年以降ずっと「テクノロジー」である。2004年から2010年までは「市場の変化」がトップだった。テクノロジーは2002年時点では6位だったが、年を追うごとに順位を上げていった。
テクノロジーがCEOの最大の関心事になった背景にはIoTがあると池田氏は言う。IoTによってネットワークにつながるデバイスの数が急増した。1950年時点でネットワークにつながっていたデバイスは5000台に過ぎないが、2014年時点では100億台に達しており、既に世界の人口を超えている。
ネットワークにつながったデバイスの数が増えたことから、デバイスが生成するデジタルデータの量が爆発的に増えている。こうしたデータの大半は非構造化データである。さらに、「Watson」のようにビッグデータをコンピュータで分析して解釈して意味を引き出すコグニティブテクノロジーも登場した。
「現在ではベーシックインカムの是非が問われている。背景にはAIがある」(池田氏)。AIが労働を代替する時代に、企業はこれを機会と捉えて成長する必要があるという。