写真●野村総合研究所理事の楠真氏
写真●野村総合研究所理事の楠真氏
(写真:井上裕康)
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 「第3世代プラットフォームの破壊力はすさまじい。生き抜くためには独自ソフトウエアの開発が必要」。2016年7月7日、都内で開催されている「IT Japan 2016」(日経BP社主催)で、野村総合研究所で理事を務める楠真氏が講演を行い、警鐘を鳴らした。

 まず楠氏はビジネスのデジタル化を、「生産手段がソフトウエアになること。そしてソフトウエアを使って生まれた製品やサービスが、既存のビジネスを飲み込んでいくこと」と定義した。例として、車の自動運転をソフトウエアの提供で可能にした米テスラ、店舗もなく販売員もいないのに世界最大の小売業者となった米Amazon、車を1台も保有していないのに世界最大のタクシー会社となった米Uberを例に挙げた。

 こうしたIT企業の動向について、アメリカでは「第3世代プラットフォーム」という用語が使われているという。第1世代はメインフレームの時代で、代表的な企業は米IBM。第2世代はクライアント・サーバーシステムの時代で、米Microsoftや米Intelが代表。第3世代は、米Amazon、米Microsoft、米Apple、米Googleといった企業が、クラウドやモバイルを使って新しいアプリケーションを作っていくことだと説明した。

「エコシステム」がビジネスのキーワードに

 第1世代から第2世代へとプラットフォームが変わったのは、テクノロジーの進化によるものだった。だが、第2世代から第3世代への変化は全く事情が異なり、「もっと凶暴」(楠氏)だという。この変化の特徴はまず裾野の広さだ。YahooとGoogleがポータルのページビューを競っていた第2世代では、せいぜい1日1時間の占有時間を奪い合った。だが、第3世代ではモバイルの普及により、接触している時間が何十倍にも増加している。

 次に、クラウド技術によって、アプリとアプリの連携、つまりビジネスとビジネスの連携が非常に簡単になっている点。そうした変化によって、「既存のビジネスを破壊するという意味での『エコシステム』が、ビジネスのキーワードになってきた」と楠氏は指摘した。

 楠氏は、この変化を「米国のITエンジニアによる逆襲」だと見ているという。5年ほど前までの「IT=効率化」という第2世代プラットフォームでは、アウトソーシングが盛んで主役はスーツ姿のインド人や中国人が演じていた。第3世代でクリエイティビティが要求されるようになると、Tシャツ姿で床にあぐらをかいてMacBookをひろげる米国人が主役の座を取り戻しているという。