写真●セールスフォース・ドットコム、取締役社長兼COOの川原均氏
写真●セールスフォース・ドットコム、取締役社長兼COOの川原均氏
(写真:井上裕康)
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 「日本企業はコスト削減と生産性向上のためにITに投資しているが、米国企業は競争優位性のために投資している。日本企業はSOR(System of Record、記録システム)だけでなくSOE(System of Engagement、顧客とのエンゲージメントシステム)に多くの視点を割くべきだ」。セールスフォース・ドットコムで取締役社長兼COO(最高執行責任者)を務める川原均氏(写真)は、2016年7月7日IT Japan 2016で講演し、顧客視点に立ったシステム開発の重要性を説いた。

 川原氏は冒頭で、現在は顧客主体で新サービスをつくり出すが第4次産業革命の時代であると説明。続けて『ザ・セカンド・マシン・エイジ』という書籍を引き合いに出し、過去に労働者ひとり当たりの生産性が飛躍的に向上した歴史について触れた。

 ザ・セカンド・マシン・エイジに先立つザ・ファースト・マシン・エイジは、第一次世界大戦中の1915年を起点とした25年間を指す。1915年以前は、労働者一人当たりの生産性は年率1%で成長していた。これに対して1915年以降の25年間は、年率2.4%の成長を遂げた。生産性が急伸した理由は、第一次世界大戦後に工業技術をビジネスに転用し、それに成功したからだという。

 ザ・セカンド・マシンエイジは、その中心点を1995年に置いている。Windows 95が登場しインターネットが普及した時期にあたる。1995年以降に、インターネット技術を利用した新しいサービスが次々に登場し「現在では、SNSやクラウド、IoTといった技術が生産性を上げている」(川原氏)。

行政も顧客(市民)の願いを叶えるサービスを提供

 川原氏は、インターネット技術を使った新しいサービスを、顧客主体の視点でつくり上げることが重要になるという。こうした事例の一つとして、自治体が提供しているサービスを紹介した。いずれも、市民を顧客としている点が共通している。

 千葉市が市民向けにSalesforceを基盤として提供しているサービスが、「ちばレポ」である。市民が道路に穴が空いているなど修理すべき箇所を見つけた際に、スマートフォンアプリで市に報告できる。