写真●コニカミノルタ代表執行役社長の山名昌衛氏
写真●コニカミノルタ代表執行役社長の山名昌衛氏
(写真:井上裕康)
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 「顧客が困っていることを解決することが大切だ。こうなったらいい、ということを突き詰めれば、新しいサービスのアイデアが出てくる」。コニカミノルタで代表執行役社長を務める山名昌衛氏(写真)は2016年7月7日、IT Japan 2016で講演し、第4次産業革命が起こっている現在において企業がとるべきスタンスについて解説した。

 「仕事で海外によく行くが、この2年間で特に思うことは、現在は知恵とスピードの時代だということだ」。山名氏は冒頭で、こう切り出した。世界の大企業のCEO(最高経営責任者)は皆、デジタル技術を取り入れた新しいビジネスを作り出すことが自分たちの仕事であると認識しているという。

 コニカミノルタも、2006年に本業だったカメラとフィルムの写真事業から撤退し、新しい事業に取り組んできた。2015年度の売上高1兆317億円のうち、オフィス周りが57%、デジタル印刷が20%、ヘルスケアが9%を占める。「A3カラー複合機やオンデマンド印刷など、成長が見込める領域でトップを目指す。また、ここ数年はハードウエアからサービスにシフトしている」(山名氏)。

ユーザーの困りごとを洞察すればアイデアは無限

 現在は、第4次産業革命真っ只中と言われている。インターネットにモノがつながって新たな価値を生み、さらにプラスアルファの要素が加わって大きな価値が生まれる。これまでのやり方の延長線上にはない非連続なイノベーションによって、圧倒的な成長が得られる。例えば、UberやAirbnbなどのシェアリングエコノミーのトレンドがある、と山名氏は指摘する。

 市場の変化も激しい。「写真用カラーフィルムの市場規模は、デジタルカメラが登場して5年でピークを迎え、次の5年で半減した。デジタルカメラの市場規模は、スマートフォンが登場してから3年でピークを迎え、次の3年で半減した」(山名氏)。

 こうした変革の時代にあって、企業が取るべきスタンスは、「顧客が今困っていることを解決すること」(山名氏)。新しいアイデアは、顧客への洞察を追求することによって生まれる。

 アイデアを素早く実現するためには、スタートアップベンチャーと組んでエコシステムを形成することも重要と考えており、コニカミノルタはBIC(ビジネスイノベーションセンター)と呼ぶ組織を世界各所に作っている。そこでは、警備ロボットやIoTセンサー、AR(拡張現実)、AI(人工知能)による介護、などに取り組んでいるという。

デバイス側で処理するエッジコンピューティングに注力

 山名氏は、現在そして今後登場するのは、物理世界とソフトウエアが連携したサイバーフィジカルシステムだという。画像などのデータを収集してシステムにインプットし、これを処理して価値に結び付ける。データを収集してシステムにインプットする部分で、複合機や医療機器、計測器などデバイス(装置)が必要になるが、コニカミノルタはこの分野で勝負している。

 入力したデータは、一般的にはクラウドで処理する。コニカミノルタはここで、クラウドではなくデバイスに近いエッジ側でデータをリアルタイムに処理するエッジコンピューティングに注力しているという。