写真●Uber Japan執行役員社長の高橋 正巳氏
写真●Uber Japan執行役員社長の高橋 正巳氏
(写真:井上裕康)
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 「日本の自動車は時間の96%は眠っている」。このように語るのはUber Japan執行役員社長の高橋正巳氏だ。高橋氏は2016年7月6日、「IT Japan 2016」(日経BP社主催)の基調講演に登壇し、Uberの取り組みと戦略について語った(写真)。

 高橋氏は冒頭、国土交通省の統計を紹介。「現在国内の乗用車保有台数はおよそ6000万台と言われている。ほぼ一家に一台という状況になっている」。ただし乗用車に限っていえば、その稼働率は極めて低いという。

 また、交通渋滞についても言及。国内では渋滞によって38億時間が無駄になっているとの推計を示した。自動車によるモビリティは便利さや生活の豊かさを与えてくれる一方で、数々の社会問題の原因にもなっている、と高橋氏は指摘する。

 「Uberは、稼働していない自動車とタクシーで移動したいユーザーとをマッチングさせるビジネスを展開する。同時に、渋滞などの社会的課題に向き合っている企業でもある」(高橋氏)。

 ここで高橋氏は、Uberが誕生した経緯を紹介した。Uberは、トラビス・カラニックとギャレット・キャンプが、2008年のパリの学会の帰りに、雪で電車やバスが止まってしまったことから、スマートフォンでタクシーを呼ぶというアイデアを思いついたのだという。「社会的な課題に挑戦するという戦略は、2010年のサービススタート以来、世界中でビジネスを展開していく上で自然と作られていったもの」(高橋氏)。

 2010年にサンフランシスコでサービスが始まったUberは、口コミで評判が広がったのだという。現在世界450都市でサービスが展開され、2015年には累計10億回目の乗車があった。

テクノロジーがビジネスを拡大する

 Uberのスタートダッシュを可能にした要因について、高橋氏は「テクノロジーをうまく顧客体験や付加価値に結び付けられたこと」だと話す。さらに「データドリブンビジネスを戦略に取り入れたことで、新しいシェアビジネスをさまざまな国に展開できるようになった」(高橋氏)。

 例えばUberが、飲酒運転による事故の発生時間とUberの利用時間を調べると、相関関係が認められた。このことから、Uberを飲酒運転事故削減につなげられないかと考える。実際シアトルでは、Uberを導入したら夜間の飲酒運転事故が10%ほど減少したという統計があるという。

 パリやサンフランシスコでは、通勤電車のラストワンマイル問題に、Uberが利用されているというデータが確認されている。郊外では、車で市内まで通勤するのではなく、最寄りの地下鉄の駅と自宅の間でUberを利用する人が増加した。ニューヨーク州では、マンハッタンなどの都市部より、郊外・地方ほどUberが活用されているという。

 また、最近開始したサービスである「Uber Pool」は、方角が同じ複数の利用者を1台の車でシェアする。利用者はタクシー代を割り勘にでき、ドライバーは車の稼働率を上げることができる。サンフランシスコでは、すでにUber利用の40%がUber Poolだという。