富士通と米オラクル、日本オラクルは2016年7月6日、クラウド分野での事業提携を発表した(写真1、写真2)。「Oracle Cloud」のPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)やSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を、富士通の国内データセンター(DC)から提供。富士通のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5(K5)」とのデータセンター内接続も実施する。両社の連携により、基幹系をはじめとする国内企業システムのクラウド移行を促進する。提供開始は、2016年度第4四半期。富士通は、2017年度からの3年間で500億円の売り上げを目指す。
富士通のデータセンターから提供するPaaSは、「Oracle Database」の機能をクラウド上で利用できる「Oracle Database Cloud Service」。これまで、国外データセンターからしか提供されていなかった。富士通のデータセンターを活用することで、重要データを国内で管理したい企業のニーズに応える。単体サービスとして提供するほか、K5のオプションとしてもメニュー化(写真3)。K5のポータル画面から利用できるようにする。サービスの運用はオラクルが担い、富士通が販売する。
人材管理向けのSaaS「Oracle Human Capital Management(HCM)Cloud」も、富士通のデータセンターから提供する。オラクルのSaaSの一部は従来も国内データセンターで運用してきたが、Oracle HCM Cloudを国内で提供するのは今回が初めて。富士通はOracle HCM Cloudを自社グループでも採用し、蓄積したノウハウを基に顧客に販売する。
「Oracle Databaseを使っている顧客の中に、クラウド活用に対するニーズが高まっている」。富士通 執行役員専務 デジタルサービス部門長兼CTO(最高技術責任者) 香川進吾氏はこう話す。Oracle Databaseの豊富な導入実績を生かしつつ、K5のIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)やPaaSを連携。システム構築から運用まで一貫したサービスを提供することで、企業システムのクラウド移行を促進する。「Oracle RAC(Real Application Clusters)」など、高可用性が求められるシステム向けのOracle Database Cloud Serviceのエディション「EE Extreme Performance」を国内で唯一提供することも強みとする。
日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEO(最高経営責任者)の杉原博茂氏は「富士通は、Oracle Databaseを熟知している。また国内企業の多くが、富士通のデータセンター内でサーバーを稼働させている。国内企業との信頼関係を築いている場所と接続してサービスを提供することで、安心して利用してもらえる」と協業の狙いを説明した。
両社は、米サン・マイクロシステムズ(当時)と富士通による「SPARC」チップの共同開発など、30年以上の協業の歴史を持つ。今回の協業は、2015年4月に行われた、オラクルのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTOと富士通の山本正已代表取締役会長の会談から生まれたという。「従来のように互いの製品を売買するのでなく、データセンターの中で一緒にサービスを作って提供する。クラウド時代の新しい提携の形だ」と山本氏は話す。
発表会には、エリソン氏もテレビ会議で登場(写真4)。「日本企業はこれまでパッケージのアプリをあまり使ってこなかったが、今後は変わるだろう。富士通のデータセンターからSaaSやPaaS、IaaSを入手し、活用するようになる」と話した。