トヨタ自動車の佐々木 英彦コネクティッドカンパニー コネクティッド統括部 インターネット企画室 主査
トヨタ自動車の佐々木 英彦コネクティッドカンパニー コネクティッド統括部 インターネット企画室 主査
(写真:井上 裕康)
[画像のクリックで拡大表示]

 「正しいと思った仕事は信念を持ってやり続ける。一度チャンスを逃しても、粘り強く次の機会を狙っていると、意外と実現する」。こう語るのはトヨタ自動車の佐々木 英彦コネクティッドカンパニー コネクティッド統括部 インターネット企画室 主査。東京・品川の大崎ブライトコアホールで開催した「第2回イノベーターズセミナー」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)の講演での発言だ。

 トヨタ自動車という巨大組織で、デジタルマーケティング戦略を現場でリードする立場にある佐々木氏。冒頭の発言は一見すると単なる精神論のようだが、自身の経験に裏打ちされたものだ。

 例えば、現場の業務改革に取り組もうと自他の部門に働きかけたとする。賛同に混じって「このままでいいじゃないか、なぜいま、自分たちがやらなければいけないんだ」という意見が往々にして出てくるものだ。あるいは和を重視するあまり、改革が提案された会議では黙っているが、あとから参加者が文句を言い始めるといったケースもある。

 このような場合、佐々木氏は正攻法で周囲を巻き込んでいくという。「嫌われてでも、言うべきことは言う。ここで言っておかなければ、後からまずいことになると考えてのことだ」。

 正攻法には準備が欠かせない。相手を説得するためのデータをそろえるのは基本だ。自身の考えが間違っていないか、周囲の人に尋ねておくことも重要という。そのためには「普段から周囲の人の仕事を注意しながら見ていないといけない」。

 モノ作り企業らしく、「まず手を動かす」ことも有効という。プロトタイプを作ったり、新制度を小規模に試験したりする。「作ってみると、皆からああでもないこうでもないという意見が出てくる」ため、課題が見えてくるからだ。

 直球だけでなく“変化球”も駆使する。その一つが「組織を飛び越える」こと。新しいアイデアを上司に認めてもらえなかったときには、他の部署に新しいアイデアと予算を渡してしまうこともあるという。

 組織人である以上、一人でできることには限界がある。「組織を動かすには、立場が上とか下とか関係なく対話することが必要だ」と強調する。