写真●NTT ソフトウェアイノベーションセンタ 第三推進プロジェクトの市原裕史氏
写真●NTT ソフトウェアイノベーションセンタ 第三推進プロジェクトの市原裕史氏
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 「OpenStack Summitで“君が市原か”と、知らない人にも声を掛けられるようになった」。こう語るのはNTT ソフトウェアイノベーションセンタ(SIC) 第三推進プロジェクトの市原裕史氏だ。市原氏はOpenStack「Neutron」プロジェクトのコアレビューア(Core Reviewer)の一人。コアレビューアは、一般開発者が提案したパッチや新機能に対する承認権を持つ。2016年4月の選出から2カ月たち、OpenStackの発展に直接貢献できるコアレビューアの活動に、手応えを感じつつあるという。

 OpenStackはオープンソースのIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)構築ソフトで、コンピュート(Nova)や認証(Keystone)など、プロジェクト単位でサービスを開発する。

 Neutronは、マルチテナント環境で仮想ネットワークを実現するプロジェクト。最新版へのレビュー実施者は605人、適用パッチ数は1165個など、OpenStackの中でも大規模なプロジェクトに入る。

 「コアレビューアになる」。市原氏が周囲にこう宣言したのは1年半ほど前にさかのぼる。背景には、NTTグループとしてOpenStackの利用を進めるための課題があった。それまでグループ各社の必要に応じ独自のパッチを適用した「OpenStack NTT改造版」を作ってきたが、「独自に拡張していては、コミュニティ版の変化に追随しづらい」(NTT SIC Senior Research Engineerの水野伸太郎氏)。そこで、コミュニティ版への貢献活動を増やす「コミュニティファースト」へ舵を切った。

 バグ報告やパッチ作成といったコミュニティ活動は行ってきた。「ただ一般の開発者は、提案したのに途中でいなくなるなど信用度が低い。コアレビューアになることでコミュニティでの信用度は格段に上がる」。コアレビューアを目指した理由を市原氏はこう説明する。

 それまで以上にコミュニティ活動に力を注いだ市原氏。1年間のパッチレビュー件数は1087件と2016年4月時点でNeutronプロジェクト中で第7位、修正パッチ提案数も56件を数えた。「メーリングリストの質問への回答や、会合の幹事など、ボランティア活動なども評価され、コアレビューアへの推薦を受けた」(市原氏)。ほぼ全員から承認を得て、19人から成るNeutronのコアレビューアの一員に加わった。

コアレビューアになっても、レビューの数が少なかったり、会合に出てこなかったりと活動が鈍れば「コアレビューア・チームからはずされる」(市原氏)。就任から2カ月あまり、「自分の承認一つでソフトウエアが壊れる恐れもあるので、これまで以上に慎重にレビューしている」と、コアレビューアの重責を実感している。