写真●東京大学 大学院情報学環教授で札幌オープンデータ協議会会長を務める越塚登氏
写真●東京大学 大学院情報学環教授で札幌オープンデータ協議会会長を務める越塚登氏
撮影:渡辺可緒理
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 ICTの最新トレンドにフォーカスする総合展「ITpro EXPO 2016 in 札幌」(主催:日経BP社)が2016年6月30日から7月1日にかけて、札幌コンベンションセンター(札幌市白石区)で開かれた。2日目の7月1日午後4時からのキーノートスピーチには、東京大学 大学院情報学環教授で札幌オープンデータ協議会会長も務める越塚登氏が登壇。国内外のオープンデータの動向と札幌オープンデータ協議会の取り組みについて講演した。

 オープンデータとは、政府や自治体が持つ膨大な情報を、利用者が活用しやすい形で公開する取り組みのこと。越塚教授はオープンデータを、「自由に使える、再利用できる、誰でも使える、再配布できるという特徴を持ち、プログラムから利用しやすい形で公開されているデータ」と説明した。官報(印刷物)やPDFで公開されたデータは、プログラムから利用しやすい形ではないので「オープンデータには該当しない」という。

 日本でオープンデータが広く認識されるきっかけとなった事例として、越塚氏は2011年の東日本大震災後の東京電力による電力使用状況のデータ公開を紹介した。当初東京電力は、電力使用状況をグラフ画像で提供していた。これをスマートフォンアプリやブラウザーの別ウインドウで常時表示したいというニーズがあり、有志が東京電力のグラフ画像を画像認識して読み取った数値を提供し始めた。この状況を知った東京電力が、電力使用状況を数値データで提供すると、そのデータを使ったアプリを作る人が増えた。アプリの利用者が増えるとデータの誤りや不具合が指摘・修正されるようになり、より正確で使いやすいデータが提供されるといった好循環が生まれた。

 越塚氏はこの事例で注目すべき点として、こうした動きが1週間程度の短い期間に起こった点を挙げた。「同じことをお役所がやろうとすると、予算申請して、会議を通してといった手順を踏む必要があり数カ月はかかってしまう。データを出すだけで短時間でこれだけの成果が出るのがオープンデータのすごいところ」と、データ整備の効果を説明した。

 国内では政府のデータカタログサイトを筆頭に、オープンデータを公開する動きが盛んになっているが、海外ではオープンデータの量も利活用も日本以上に盛んな国がたくさんあるという。越塚氏はオープンデータの活用事例として、ロンドン市のデータを活用した「CityDashboard: London」を紹介した。天気や地下鉄の運行状況、レンタルサイクルの貸出状況から、大気汚染測定器の測定結果に交通カメラの映像まで、さまざまなオープンデータを使って、ロンドンの現状を一目で見られるようになっている。

 越塚氏は、自身が会長を務める札幌オープンデータ協議会の活動についても紹介した。協議会では、オープンデータを使って外国人を含めた観光客の利便性向上、ならびに満足度アップにつながるアプリを募集するコンテスト「札幌オープンデータアプリコンテスト(Sapporo Open Data App Challenge 2015)」を開催した。コンテストには22団体から応募があり、札幌で人が集まる部分を直感的に見られるアプリ「Sapporo Heat Map」が最優秀賞を受賞した。同コンテストは今年も開催予定という。