NECは、炭素シートが角(つの)の形に丸まった「カーボンナノホーン」が繊維状に集合した新材料「カーボンナノブラシ」を発見したと発表した。「カーボンナノチューブが持つ導電性と、カーボンナノホーンが持つ吸着性・分散性という双方の利点を備えた材料」(NEC 特別主席研究員 飯島澄男氏)という。

カーボンナノブラシの電子顕微鏡写真
カーボンナノブラシの電子顕微鏡写真
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 蓄電池や燃料電池の電極としての利用に加え、センサーやアクチュエータの応答速度を高める、ゴム・プラスチック複合材の導電性を高めるなどの用途を見込む。2017年度にサンプル提供を開始する考えだ。

NEC 特別主席研究員の飯島澄男氏
NEC 特別主席研究員の飯島澄男氏
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 カーボンナノホーンは、カーボンナノチューブの発見者として知られる飯島氏が1998年に発見した素材。多量の触媒を表面に保持できる「吸着性」、凝集せず良質のペーストを作りやすい「分散性」を備える一方、導電性が低い欠点があり、これまでは電極材などへの実用化が進まなかった。

 今回NECは、カーボンナノホーンがブラシのように四方八方に突き出た繊維状の炭素材料を作成。繊維の上を電子が流れることで、導電性を従来の球状カーボンナノホーンの10倍に高めることができた。

抵抗率が従来の1/10に。電気自動車向け充電池向けに電極の導電材を試作したところ、充電を10~15%高速化できる性能が得られたという
抵抗率が従来の1/10に。電気自動車向け充電池向けに電極の導電材を試作したところ、充電を10~15%高速化できる性能が得られたという
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 具体的には、球状カーボンナノホーンとカーボンナノブラシの混合体の抵抗率を測定したところ、従来の約13Ω・cmから、約1Ω・cmへと抑えられた。充電池に使う事で充電を高速化でき、出力も高められるという。

NEC IoTデバイス研究所 主任研究員の弓削亮太氏
NEC IoTデバイス研究所 主任研究員の弓削亮太氏
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 製造法は、室温・常温下で鉄触媒を含む炭素ターゲットにレーザーを照射する、というもの。「他のナノ炭素材料と比べて低コストに生産できる」(NEC IoTデバイス研究所 主任研究員の弓削亮太氏)。

 これまで同社は、鉄を含まない炭素ターゲットで球状カーボンナノホーン集合体を作成していた。これを弓削氏が鉄を含む炭素ターゲットに置き換えたところ、カーボンナノブラシと球状カーボンナノホーンの混合体を作成できた。既に特許を取得済みという。