税理士向けのクラウド型会計システムを提供するアカウンティング・サース・ジャパン(A-SaaS、東京・港)は2016年6月30日、横浜銀行など4社と共同で、中小企業向けの「トランザクションレンディング」の実現に向けたコンソーシアムを結成したと発表した。会計データを生かして融資審査を迅速化し、即日か翌日に融資できる新サービスの可能性を検討。データを用いた実証を行い、9月頃までに結果をまとめる。

 「トランザクションレンディング」とは、銀行口座やクレジットカードの取引データ、商品の仕入れ・販売状況、決済情報などを統計的手法やAI(人工知能)で解析して与信審査を行い、融資するサービスを指す。新コンソーシアムは年商3億円程度の規模の中小企業に向けた審査モデルの構築を目指す。

 中小企業は、個人保証か不動産担保がなければ融資を受けにくい。一部金融機関は財務データを基に無保証・無担保で融資する「スコアリングモデル融資」を商品化している。だが、財務データの信ぴょう性や解析の精度に問題があり、融資を回収できずに不良債権化するケースも多かった。

 A-SaaSの佐野徹朗代表取締役社長CEO(最高経営責任者)は、「当社は税理士の契約先である約12万社の会計ビッグデータを持っており、日々の取引をリアルタイムに近い形で捉えられる。税理士の目を通した税務申告のための会計データなので信ぴょう性も高い」と説明する。

 ただし、融資サービスにつなげるには審査モデルを確立する必要がある。同じ金額の収入・支出データでも、地域や業種、取引先や日付などによって意味合いが異なる。A-SaaSはさまざまな切り口の会計データサンプルを抽出し、横浜銀行などと共に解析手法の確立を目指す。

 新コンソーシアムのメンバーは、A-SaaS、横浜銀行、浜銀総合研究所、経理代行サービスのココペリインキュベート(東京・千代田)、決済データ分析サービスのかっこ(Cacco、東京・港)の5社。東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授と、東大先端科学技術研究センターの森川博之教授がオブザーバーとして参加する。