写真1●前日には30分刻みで配送時間を知らせる
写真1●前日には30分刻みで配送時間を知らせる
(出所:アスクル)
写真2●アスクルの岩田彰一郎代表取締役兼CEO
写真2●アスクルの岩田彰一郎代表取締役兼CEO
(出所:アスクル)
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写真3●物流作業はロボットでスピードアップ
写真3●物流作業はロボットでスピードアップ
(出所:アスクル)
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 アスクルは2016年8月末から、ECサイト「LOHACO(ロハコ)」の利用者に対し、1時間単位で受け取り時間を指定できるサービスを提供することを、2016年6月28日に発表した。東京では千代田区、中央区、港区、江東区、世田谷区、大阪では北区、福島区、此花区が対象で順次拡大する。荷物を待つ顧客が在宅しなければいけない時間を短縮して利便性を高め、大手ECを追撃する。

 「Happy On Time」と呼ぶこの新サービスでは、顧客がLOHACOでの購入時に、荷物の受け取り時間を1時間単位で指定する。前日には、LOHACOのアプリを通じて配送時間を30分単位で顧客に知らせる(図1)。さらに到着10分前にも直前お知らせを出す。1回当たり3900円以上購入すれば無料で1時間の時間指定ができる。顧客はピンポイントの配送時間だけ在宅していればいいので、荷物を待つ時間のムダを省ける。

 一方アスクルにとっては、顧客の不在による荷物の持ち戻りや再配達が減るため、環境負荷の低減などのメリットがある。岩田彰一郎代表取締役社長兼CEOは「再配達の低減はEコマース業界全体で解決すべき社会課題。小刻み配送で解決したい」と話した(写真1)。2016年5~6月に、東京都江東区で2時間単位で配送時間を指定するサービスを試験導入したところ、不在率は6%にとどまった。国土交通省が2015年に発表した不在率23.5%と比較し、大幅に改善した。

 Eコマース業界では、Amazonが注文から1時間以内に商品を配送する「Prime Now」を2015年11月に開始するなど、配送時間の短縮を競っている。アスクルの川村勝宏執行役員ECR本部本部長は、「短時間配送も検討したが、受け取り時間指定の方が顧客のニーズは高いと判断した」と話す。

 配送が頻度が増えることで配送車の積載率が低下し、コストアップにつながることも懸念される。「企業向け通販の荷物と混載して積載率を高める」(岩田社長)とする。

 配送時間を順守するため、日立製作所のAI(人工知能)を活用する。アスクルの配送管理システムから到着時刻の予定と実績のデータなどを投入。道路の渋滞や天候、ドライバーなどの情報を併せて分析し、どの変数が精度向上に寄与するかを明らかにする。「既に分析に着手しているが、いくつかの発見があった」(池田和幸執行役員ECR本部統括部長)。

 さらに、物流拠点にはロボットを導入。ピッキング作業に活用し、出荷までの時間短縮を図る。大型物流拠点の「ASKUL Logi PARK 首都圏(埼玉県三芳町)」では、ベンチャー企業のMUJIN(東京・文京)が開発したロボットコントローラーを導入し、2台のロボットを制御する(写真2)。

 多品種少量の商品を扱う物流拠点でのピッキング作業は、商品の形状が多様なため、これまでロボットの導入が難しく、人手に頼らざるを得なかった。MUJINのシステムでは高精度の画像認識システムで商品の状況や大きさ、形状を3次元で認識し、この情報を基に最適なロボットアームの軌道やつかみ方を瞬時にプログラムとして生成する。ケース内に収められた商品の位置を正確に把握してつかみ、別のケースの空きスペースに当てはめるといった作業も可能になる。

 アスクルは、今春稼働させた「ASKUL Logi PARK 横浜」をはじめ、今後建設予定の大阪の拠点などにロボットを導入していく。24時間連続稼働し、高い位置での作業も可能といったメリットを生かして、まず自動倉庫からの出荷作業に活用。成果を検証しながら、最終顧客への出荷ラインにも導入していく予定だ。