写真●オープンイノベーションのテーマを発表する、バイエル薬品オープンイノベーションセンターの菊池紀広マネジャー
[画像のクリックで拡大表示]
写真●オープンイノベーションのテーマを発表する、バイエル薬品オープンイノベーションセンターの菊池紀広マネジャー

 バイエル薬品は2016年7月、オープンイノベーションの一環として、「ベターライフのための革新的なモニタリングソリューション」のアイデアを募集する。健康を維持したり、病気にかかった人や医療関係者を支えたりする、日本市場向けのモニタリングの仕組みを、デジタル化施策として公募する。例えば、疾患の早期発見、発病後の管理、「妊活」や妊娠中の女性のサポートなどをモニタリングする仕組みが考えられる。

 「アイデアは、デジタルヘルス分野のスタートアップ企業にとどまらず、モバイル端末やウエアラブル機器、クラウドなどのITを組み合わせたデジタルヘルスに関心ある人に対して、広く募る。ぜひ参加してもらいたい」と、バイエル薬品オープンイノベーションセンターの菊池紀広マネジャーは話す。

 この募集は、バイエル薬品が2016年に国内で始めているプログラム「Grants4Apps Tokyo」の一環として行う。2016年内に3回にわたって募集テーマを1つずつ発表し、その都度アイデアを募集して選考していくプログラムだ。

 今回のテーマ募集は第2回目だ。2016年7月上旬に募集を始める。プログラム専用サイトのなかで、受け付けられるようにする。応募の締め切りは2016年7月29日。バイエル薬品社内の一次選考を経て、2016年9月には最終選考会を実施する。最優秀賞になったアイデアには、助成金100万円が授与される。

 すでに第1回は、「服薬アドヒアランスを改善するための革新的なソリューション」をテーマに、募集と選考が終わっている。アドヒアランスは「執着」という意味。このテーマでは、患者が、治療の仕方を決めることに積極的にかかわり、薬も途中でやめずに継続服用するようになるデジタル化策を募集した。2016年6月27日、東京都内で最終選考会が開かれた。1次選考を通過した3グループが発表。その後、会場で、第2回のテーマを発表した。

写真●「Grants4Apps Tokyo」第1回の最終選考プレゼンの様子
[画像のクリックで拡大表示]
写真●「Grants4Apps Tokyo」第1回の最終選考プレゼンの様子

 東京都小平市にある公立昭和病院の秋葉春菜医師や多摩美術大学情報デザイン学科の吉橋昭夫准教授らのグループは、HIV検査で陽性反応があり、治療の必要がある人を支援するスマホアプリ「おくすりサポート」を提案した。飲んでいる薬や、副作用の状況などを、タッチ操作で通院患者が入力すると、そのデータを、支援団体が情報提供のきっかけにしたり、医師が診察時の判断に役立てたりすることができるようにする。

 遠隔診療プラットフォームの整備・運営を手掛けるIT企業、情報医療の原聖吾代表取締役はビッグデータの活用を提案した。慢性疾患を持ち、薬を継続的に飲む必要がある通院患者に対して、どんな指導をすれば、投薬を途中で止めないようにできるのかを、深層学習などを使って解析する。患者ごとにベストな指導方法を見極めるプランを示した。

 慶応義塾大学医学部循環器内科医師の木村雄弘医学博士が提案したのは、「飲み忘れゼロ!プロジェクト」だ。自らが“システムインテグレータ”として、医療業界とIT業界の橋渡し役を担当し、どんな年齢層の患者に対しても、薬の飲み忘れを防ぐITの開発を、2017年をメドに目指す計画を紹介した。3グループのプレゼンを聞いたバイエル薬品の幹部による最終選考の結果、木村医学博士のプランに最優秀賞が贈られた。