写真1●オンライン面接普及推進協会の佐藤瑞穂代表理事
写真1●オンライン面接普及推進協会の佐藤瑞穂代表理事
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写真2●同協会が提供予定のオンライン面接システム
写真2●同協会が提供予定のオンライン面接システム
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写真3●ソニー、日産自動車、日本たばこ産業、富士通によるパネルディスカッションの様子
写真3●ソニー、日産自動車、日本たばこ産業、富士通によるパネルディスカッションの様子
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 オンライン面接普及推進協会は2016年6月23日、2016年4月5日に設立登記を完了し、正式発足したと発表した。インターネットを活用した遠隔地間での採用面接(オンライン面接)を推進することで、学生の就職活動における金銭的/時間的負担の軽減を目指す。独自開発のオンライン面接システムも企業向けに提供する。

 オンライン面接普及推進協会は、オンライン面接の普及やそのための環境整備などを手掛ける特定非営利活動法人。代表理事は、国内や米国で長年人材事業に携わってきた佐藤瑞穂氏が務める(写真1)。「米国ではオンライン面接が一般的に行われているのを目の当たりにした。国内でもこれを普及させたい」(佐藤氏)との思いで協会を設立した。

 特に地方の学生にとっては、就職活動に当たって交通費や宿泊費、移動時間が重い負担になっているという。それが原因で遠方の企業への応募を諦めざるを得ないケースもあり、こうした課題をオンライン面接を通じて解消することを目指す。そのため、産業界や大学に対して啓蒙活動を実施する。

 クラウド型のオンライン面接システムも提供する(写真2)。来月にも正式サービス開始予定で、料金は年間3万円から。「低価格に抑えることで、普及を促進する」(佐藤氏)狙いという。企業側の面接官と応募者に、1回限りのIDとパスワードを発行。これを使ってログインすれば、互いの顔を見ながら話ができる。面接の内容を録画し、保存することも可能だ。

 ツールとしては「Skype」など無料のビデオ通話サービスも使えるが、「コンプライアンスやセキュリティの観点から不安を抱く企業もある。企業が安心して使えるシステムの存在が、オンライン面接を全国に広げる鍵となる」と佐藤氏は話す。

4社の人事担当者が語るオンライン面接

 同協会は同日、ソニー、日産自動車、日本たばこ産業、富士通の4社の人事担当者によるパネルディスカッションも実施した(写真3)。日産自動車や日本たばこ産業は既に海外の応募者向けにオンライン面接を一部実施しているが、国内の新卒採用には4社とも未適用という。いずれの担当者も、オンライン面接によって学生の金銭的/時間的な負担を減らせるほか、面接スケジュールを調整しやすくなるといった期待を示した。

 企業側にとってもメリットがあるという。既に在宅勤務制度を整備/運用している日産自動車の人事本部 日本タレントマネジメント部 Chief of Recruitment 伯耆原政志氏は、面接担当者の労働環境の改善にもつながると指摘。「在宅勤務と同じような感覚で、面接官役の従業員と学生がそれぞれの自宅で面談する、といったことも可能になる」(伯耆原氏)と話した。「面接に来る学生に支払っている交通費を削減できるぶん、学生のためになるようなコンテンツやイベントの企画に費用を回せる」(日本たばこ産業 人事部 藤内省吾次長)との発言もあった。

 録画したオンライン面接の様子を、後から生かせるといった指摘もあった。ソニー 人事センター 人事1部の北島久嗣統括部長は「面接の様子を後から見直すことで、面接官のスキル向上に役立てられる」と話す。富士通 人事本部の山本幸史人材採用センター長は「蓄積された面接の情報を分析することで、当社で活躍できる人の共通点が見えてくるのではないか。それが採用の一つのポイントになると分かれば、面接前にそうした面を自動チェックする仕組みを作れる。面接時には、本人のキャラクターを掘り下げることに時間を費やせるようになる」と語った。

 面接風景の録画については、学生にとっての抵抗感も話題に上った。日産自動車の伯耆原氏は「日本の学生が録画をどう受け止めるかは現時点では読めない。世の中の動向を見ながら取り組んでいくのがよいのでは」と話した。