ソフトバンクグループは6月22日10時から第36回定時株主総会を開催した。前日夜に発表したニケシュ・アローラ代表取締役副社長の退任と顧問就任に伴い、選任する取締役からアローラ氏を取り下げた。冒頭に登壇した同氏は「(ソフトバンクグループ入りした)2年前、孫正義社長からソフトバンクの変革に向けた種まきの仕事を与えられた。今後の成功を支える礎を作ったと自負している。孫社長の今回の決断を尊重し、今後も十分にサポートしていきたい」と語り、円満な退任であることを強調した。

 アローラ氏は米グーグル上級副社長から2014年、孫社長の熱烈な誘いでソフトバンクグループに移籍。孫社長はIT業界を中心に世界に豊富な人脈を持つアローラ氏を自らの後継者と公言しており、2015年には代表取締役副社長に引き上げた。

 孫社長は株主総会で「僕自身の体力や年齢がソフトバンクの成長の妨げになってはいけないと考え、60歳になったらニケシュに社長のバトンを渡そうと考えてきた」と語った。その人物が退任するに至った背景について「(人工知能が人間の知能を上回る)シンギュラリティ(技術的特異点)の到来が迫り、情報革命はこれから本番を迎える。そうした中で社長の座を譲る時期が1年後に迫り『もう少しやり残したことがある。社長を続けていきたい』と欲が出てきた。それでニケシュに『申し訳ない』と話した」と語った。

 アローラ氏はソフトバンクグループで、インドのネット通販大手のスナップディールやタクシー配車サービスのANIテクノロジーズなど数千億円規模のベンチャー投資をけん引。一方、直近では投資先の中国アリババ集団や国内ゲーム大手ガンホー、フィンランドのゲーム大手スーパーセルの株式売却を立て続けに実施し、ソフトバンクに総額2兆円をもたらした。2015年3月期には入社に伴う契約金などを合わせた約165億円、16年3月期にも約80億円という高額な報酬を受け取ったことでも注目を集めた。

 これまでソフトバンクグループの経営体制は海外事業をアローラ氏、国内事業を宮内謙取締役が管轄していた。今後、アローラ氏の職務は実質的に孫社長が率いていく見通しだ。「最低5年、おそらく10年近くは社長のままでいきたいと決意した」と孫社長は断言する。アローラ氏の招聘で後顧の憂いをなくしたかに見えたソフトバンクグループだが、孫社長の後継者問題は再び将来に持ち越されたことになる。