韓国Samsung Electronicsは現地時間2016年6月16日、クラウドサービスを手がける米国の新興企業、Joyentを買収すると発表した。買収後JoyentはSamsungのモバイル事業の傘下に入るが、独立事業として運営を継続し、これまでどおりクラウドインフラやソフトウエアサービスを顧客に提供していく。

 Joyentの創業は2004年。米カリフォルニア州、サンフランシスコに本社を置き、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)を提供している。米Wall Street Journalによると、Joyentは、米Amazon.comのAmazon Web Services(AWS)や米MicrosoftのAzureと競合するサービスを提供している。

 Samsungは取引金額や目的など買収に関する詳細を明らかにしていない。だが同社のMobile Communications事業最高技術責任者(CTO)、Injong Rhee氏はWall Street Journalのインタビューに応じ、「Joyentの事業で売り上げを拡大することが目的ではなく、当社自らがJoyentの顧客になることが目的だ」と述べている。

 同社は現在、AmazonやMicrosoftのサービスに依存している。「Joyentを傘下に収めることで、新たなコンピューティングリソースを得ると同時に、クラウドサービスとの直接的な関係を持つことができる」と同氏は述べているという。

 そうしたクラウドサービスの応用分野としてRhee氏は、仮想現実(VR)や人工知能(AI)などを挙げている。またSamsungは自社のモバイル機器を通じて集めたデータを解析し、パーソナルレコメンデーションを提供する可能性についても検討していると、Wall Street Journalは伝えている。

 なおSamsungはこれまでの2年間に2社の米新興企業を買収している。1社はIoTプラットホームを手がけるSmartThings(関連記事1)。もう1社はモバイル決済技術のLoopPay(関連記事2)。このうち後者の技術は、その後同社が立ち上げたモバイル決済サービス「Samsung Pay」に使われた。 [発表資料へ]