スキャリティ・ジャパンは2016年6月16日、オブジェクトストレージを構築できるSDS(ソフトウエアデファインドストレージ)ソフトの新版「Scality RING v6.0」を発表、同日受注を開始した。新版では、Amazon S3互換のAPIでアクセスする際のユーザーのアクセス権限情報を、外部データベースであるActive Directory(AD)で管理できるようにした。これにより、企業情報システムと組み合わせやすくなった。

 Scality RINGは、ソフトウエアで実現したスケールアウト型のオブジェクトストレージである(関連記事:分散ストレージソフトの米Scalityが日本法人を設立)。分散KVS(キーバリューストア)型のソフトであり、サーバー台数を増やすだけでストレージを拡張できる。データのコピーを複数ノードに同時に保存することによって可用性も確保する。業務サーバーやバックアップソフトなどからは、オブジェクトストレージ(HTTP)またはファイルサーバー(CIFS/NFS)としてアクセスする。

 今回の新版では、Amazon S3互換APIでオブジェクトにアクセスするためのインタフェース機能「S3コネクタ」を刷新した。新しいS3コネクタを使うと、CIFSでファイルアクセスするCIFSコネクタを使っている時と同様に、Active Directoryでユーザー情報やアクセス権限を管理できる(図1)。従来は自前でアクセス権限を管理していたが、ADで権限情報を一元管理できるようになり、社内LANとの親和性が高まった。さらに、Active Directoryに加えてAWS Identity and Access Management(IAM)とも連携できるようにした。

図1●Scality RINGのS3互換インタフェース「S3コネクタ」を刷新し、ユーザー権限情報を外部のActive Directoryで管理できるようにした
図1●Scality RINGのS3互換インタフェース「S3コネクタ」を刷新し、ユーザー権限情報を外部のActive Directoryで管理できるようにした
(出所:スキャリティ・ジャパン)
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S3互換インタフェースだけを切り出してオープンソース化

 中核となる分散KVSのストレージ機能はC言語で開発してあるが、ストレージにアクセスするインタフェースの一つとして、今回のS3コネクタはサーバー側で動作させるJavaScriptであるNode.jsで開発した。そして今回、このS3コネクタだけを切り出した製品「S3 Server」をオープンソースとして公開した(図2)。GitHubやDocker Hubなどからダウンロードできる。無償で利用できるが、有償サポートサービスも月額950ドルで提供する(英語でのサポートに限る)。

図2●S3コネクタだけを切り出して「S3 Server」の名称でオープンソース化した
図2●S3コネクタだけを切り出して「S3 Server」の名称でオープンソース化した
(出所:スキャリティ・ジャパン)
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 S3 Serverは、Scality RINGの分散KVSにAmazon S3互換APIでアクセスするためのインタフェースそのものである。これをScality RING(分散KVS)と切り離して提供する。データの格納には、サーバー内蔵ディスクや外部接続ストレージなどのローカルストレージを使う。スケールアウト構成で利用することはできず、サーバー1台のスタンドアロン型で利用する。

写真●米スキャリティ、プレジデント兼COOのアーワン・メナード氏
写真●米スキャリティ、プレジデント兼COOのアーワン・メナード氏
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 オブジェクトアクセス用のインタフェースであるS3コネクタを強化した背景について、米スキャリティでプレジデント兼COO(最高執行責任者)を務めるアーワン・メナード氏(写真)は、「ブロックストレージなどと比べてオブジェクトストレージが急成長しているから」と説明する。「デジタル技術によって成り立つビジネスが主流になりつつある。こうしたデジタルビジネスが生成するデータの多くは非構造化データ。非構造データの格納にはオブジェクトストレージが適している」(メナード氏)。