写真●テスラモーターズジャパン代表のニコラ・ヴィレジェ氏
写真●テスラモーターズジャパン代表のニコラ・ヴィレジェ氏
(撮影:筒井誠己)
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 ICTの最新トレンドにフォーカスする総合展「ITpro EXPO 2016 in 名古屋」(主催:日経BP社)が2016年6月16日、名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で開幕した。初日正午からのキーノートスピーチには、電気自動車メーカー米テスラの日本法人テスラモーターズジャパン代表のニコラ・ヴィレジェ氏が登壇。「テスラのソフトウエアアップデートで実現する自動運転社会」と題して、同社の自動運転への取り組みなどを紹介した(写真)。

 講演の冒頭、ヴィレジェ氏は「全世界のエネルギー消費の3分の1が輸送に費やされている」とした上で、「持続可能なエネルギーに向けて社会を変えていくことがテスラのミッション」と宣言。「全ての車両が電気自動車になるように努力していく」と続けた。現在、毎年9000万台の自動車が生産されているが、電気自動車は0.2%しかないという。

 ヴィレジェ氏はテスラのモデル展開の戦略や生産能力の拡張計画、充電ステーションの整備状況、同社製品の性能・安全性などを説明した後で、基幹モデル「モデルS」の自動運転機能の紹介に話を進めた。

 「スマホと同じようにクルマの機能をアップデートできる」。ヴィレジェ氏はテスラ製自動車の特徴をこう表現する。自動運転機能もソフトウエアアップデータによって可能になったという。

 モデルSの自動運転はハードウエアとソフトウエアの協調で実現する。具体的には前方レーダー、高精細カメラ、16個の超音波センサーの3つのハードウエアで周辺の状況を把握し、得た情報をソフトウエアが分析して自動運転の指示を出す。

 モデルSはこれらのハードウエアを1年半ほど前から装備していたが、当初はソフトウエアを提供していなかったため、自動運転はできなかった。その後、米国政府の認可を得て、2015年10月にソフトウエアの提供を開始し、自動運転が実現した。「ソフトウエアは3Gの携帯電話回線経由で提供するので、サービスセンターにクルマを持ち込む必要はない」(ヴィレジェ氏)。日本でも今年1月、国土交通省の承認を得て、自動運転用ソフトウエアの提供を始めた。

 モデルSの自動運転は自動巡行、自動操舵、自動車線変更、自動駐車の4つの機能からなる。「自動車事故の90%はドライバーのミスが原因で起こる。自動運転は事故を大幅に減らし、安全性を高めるだろう」。

 このほかヴィレジェ氏は、モデルSの充電状況の確認や、エアコンの操作が可能なスマホアプリを披露したほか、テスラ製自動車の走行データを基に作成した正確な地図も紹介した。7万台のクルマから送られてきた7億8000万マイル分の走行データを蓄積しているという。同氏は「グーグルは10年かけて150万マイルを集めたのにすぎない」として、自社製地図の正確性をアピールした。

 「ソフトウエアのアップデートにより長期間にわたってクルマの価値を高められる。テスラはクルマの買い方を変えていく」。ヴィレジェ氏はこう語り、大勢の聴衆が参加し立ち見も出た講演を締めくくった。