写真1●プラス ジョインテックスカンパニー システム企画部 部長の松村利朗氏
写真1●プラス ジョインテックスカンパニー システム企画部 部長の松村利朗氏
(撮影:渡辺 慎一郎=スタジオキャスパー)
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写真2●コーポレート本部の山口善生氏
写真2●コーポレート本部の山口善生氏
(撮影:渡辺 慎一郎=スタジオキャスパー)
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写真3●新旧システムの本番環境構成図
写真3●新旧システムの本番環境構成図
(撮影:渡辺 慎一郎=スタジオキャスパー)
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 オフィス家具・文具大手で法人向け通販を手掛ける社内カンパニー、ジョインテックスカンパニーは、年間3000万件を出荷する販売・物流システムをAmazon Web Services(AWS)上に移行した。アマゾン ウェブ サービス ジャパンのイベント「AWS Summit Tokyo 2016」の、2016年6月3日の講演で説明した。

 AWS上への移行を完了し、本稼働したのは2016年1月1日。ジョインテックスカンパニー システム企画部 部長の松村利朗氏は、「基幹システムのクラウド化には不安があったが、稼働後半年近くたった今日まで、クラウド化が原因のトラブルは1件も起きていない」と語った(写真1)。

 システムの移行のきっかけは、2016年3月に迫っていたハードウエアの保守サポート期間切れ。旧システムは1997年にメインフレームを中心にゼロから開発し、2005年にUNIXサーバーに移行したもの。松村氏はAWSに移行した理由の一つとして「数年に一度、高額の支出が発生するコスト構造を変えたかった」ことを挙げる。

 システム移行のプロジェクトを開始したのは2014年の秋。構築を手掛けたのは日立製作所だ。「日立の担当者も含めて、ピーク時は約50人のメンバーが参画した」(松村氏)という。「いくつかのテスト作業に時間がかかった」(松村氏)ものの、全体的には予定通り進行し、約16カ月後の2016年1月1日に本稼働を開始した。

 AWSへの移行について松村氏は、「10年間で6億円のコストダウンが見込める」と話す。夜間バッチの処理時間は、「旧システムで7時間半かかっていたのが2時間半で済むようになった」(松村氏)という。

 同社コーポレート本部の山口善生氏は、1台のサーバーを複数のユーザーで共有する「マルチテナント型」のクラウドサービスを使うことに対して、「性能面で不安があった」と打ち明ける(写真2)。ところが実際に使い始めると、「全体のデータ処理速度が30%向上したことに驚いた」(山口氏)。

 システム移行では「機能拡張もいくつかあるが、基本的にはサーバーやデータベースの配置は変えていない」(山口氏、写真3)。ストレージは、クラウドストレージサービスの「Amazon Simple Storage Services(S3)」に変更した。山口氏は「オンプレミス(自社所有)の旧システムでは容量に制限があったが、Amazon S3に変えたことで制限の心配がなくなった。コストも大きく減らせた」と効果を語った。