2016年6月2日、ICTの総合展「ITpro EXPO 2016 in 九州」で、行政サイドから熊本地震でのディザスターリカバリについての報告があった。講師に熊本市総務局行政管理部首席審議員の桐原光洋氏を招いていたが、震災対応で役所を離れられないとの理由で、ビデオでの出演となった。報告内容は、日経BPガバメントテクノロジーの井出一仁編集長が代読した。

写真1●熊本市総務局行政管理部首席審議員の桐原光洋氏。ビデオでの出演となった。
写真1●熊本市総務局行政管理部首席審議員の桐原光洋氏。ビデオでの出演となった。
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 2016年4月14日の前震、16日の本震と2回の大規模な地震で、熊本市のシステムにも影響が及んだ。熊本市の場合、本庁舎に設置してあるのは基幹系システムのうち福祉系・税務系(ホスト系)のみ。オープン系のサーバー群は、別棟に健康福祉関係のサーバーを格納しているが、住民情報などのそのほかの基幹系や情報系システムはデータセンターに設置している。免震設備を備えたデータセンターの機器への被害は小さく、業務の継続が可能だったという。

 ただし、人員の面では大きな影響があった。自身が被災して身動きがとれなかったり、避難者保護や災害対策本部運営のために動員されたりしたため、前述のDRや応急業務は通常の3分の1程度の人員で遂行しなければならなかった。

 14日の前震の際は、一部の電源や空調に異常が発生したが間もなく復旧し、翌日の朝から正常に稼動した。16日土曜日の本震は、午前1時過ぎだったため年次バッチの作業中で、本庁舎のホストコンピュータを緊急に停止させなければならなかった。「16日はものすごい縦揺れで自宅は停電し、生命の危機を感じた」(桐原氏)。

 朝8時すぎにシステムを確認したところ、ホストのハードに異常があることが判明した。ホスト管理業者からは、医療機関や公安機関の復旧作業を優先するため、翌日以降でないと対応できないとの連絡を受けたという。

写真2●本震後のホストマシン室の状況
写真2●本震後のホストマシン室の状況
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 そこで17日と18日に、ハード異常の復旧とデータベース、ファイル障害状況確認を実施し、19日火曜日の朝から運用を再開した。部品などの破損は発生しておらず、ホストCPUは起動可能で、ストレージも異常はなかった。基幹系システムに関連する全業者を呼び集めて、運用再開計画を策定するなどの作業も行った。