「クラウド環境へとシステムを移行している。クラウドなら、必要なときに必要なリソースを短期に調達できる」。セイコーエプソンのIT推進本部本部長である熊倉一徳氏(写真)は2016年6月2日、「AWS Summit Tokyo 2016」に登壇。システムの移行先としてパブリッククラウドのAWS(アマゾンウェブサービス)を採用した背景と、クラウド選定のポイントを解説した。
2003年以前のセイコーエプソンは、個々の部門が独立してシステムを構築していた。2003年に、全社のインフラを外部の商用データセンターに集約することを決め、2004年から2012年にかけて集約した。狙いは、コスト効率の向上、耐障害性の強化、システムインフラを外部に委託することによる本業の強化、などである。
パブリッククラウドのAWSを検討したのは2013年のこと。ITが業務効率化のツールから戦略実現のツールへと変化したことを認識し、システムをクラウドに移行することを決めたという。「クラウドなら余剰なリソースをなくせるほか、必要な時に短期間でリソースを調達できる」(熊倉氏)と評価した(図1)。
クラウド移行の方針は、「サーバーを自己専有型からサービス利用型にシフトすること」(熊倉氏)である。これによって達成する目標は三つあった。(1)2014年から2015年末にかけて2年間で移行を完了すること、(2)サーバーとデータセンターにかかっている費用を2018年までに20%以上削減すること、(3)サーバー構築にかかる時間を現状の2~3カ月から1週間以内へと短縮すること、だ。
クラウドサービスの選定では、AWSの評価が高かった(図2)。「ホスティング環境からクラウド環境へのマイグレーションを支援するサービスを提供している点も、AWSを評価するポイントとなった」(熊倉氏)。セキュリティ面でも高評価だったという。