「もともと基幹システムを担当していた人材がマーケティング部門にいるので、情報システム部門との連携がスムーズにいく」。無印良品ブランドの商品を開発・販売している良品計画は2016年6月1日、AWS Summit Tokyo 2016に登壇した。CMT(チーフマーケティングテクノロジスト)の濱野幸介氏が、マーケティング部主導で構築したITシステムについて解説した。

 同社は、「MUJI passport」と呼ぶスマホアプリを2013年5月から提供している。店舗では会員証として利用でき、利用者が店舗のPOS(販売時点情報管理)端末にスマホアプリを提示するとポイントを得られる、といったサービスを提供している。アプリ画面から商品を検索することも可能で、ニュースコンテンツを配信する媒体でもある。ダウンロード数は500万を突破しており、1カ月で200万人が使っているという。

行動ログと販売データをRedshiftに蓄積し、横串で分析

 MUJI passportの狙いは三つあると濱野氏は言う。ネットとリアルの区別なくファンとコミュニケーションを図ること、来店客数を増やして売上を伸ばすこと、そしてマーケティング施策の効果を可視化することだ。スマートフォンアプリから得られたデータを分析するシステムを含めて、デジタルマーケティングを担当するWEB事業部が主導で構築したという。

 データセンター側では、アプリのログやWebの行動ログを生データのまま格納するために、米トレジャーデータのログ格納システムを使う。生データと販売データを合わせて横串で分析するためのDWH(データウエアハウス)にはAmazon Redshiftを、DWHに蓄積したデータを分析して可視化するBIソフトにはタブロー(Tableau)やMotionBoard Cloudを使う。

 データ分析によって、会員が年間に何回買ったかなど、POSデータからは分からなかったデータが見えてくるという。ファネル分析や、マーケティング施策の効果分析もできる。例えば、アプリに情報をプッシュ通知した結果、どれくらいの人が店舗に足を運んだのか、足を運んだ人のうち休眠していた人はどれくらいいるのか、などが分かる。Webの情報を見てから店舗に買いに行った人がどれだけいるのかも分かる。

静的WebコンテンツはS3とCDNで配信

 講演では、WEB事業部が主導で手がけたもう一つのシステム事例として、グローバルで展開しているブランド紹介サイト「muji.com」についても紹介した。以前は、各国ごとにサイトの内容や管理体制が異なっていたという。これを一元化した。

 muji.comのリニューアルでは、オブジェクトストレージサービスのAmazon S3を静的コンテンツ配信用のWebサーバーとして使っている。さらに、CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)であるAmazon CloudFrontを使って、各国から近い場所からコンテンツを配信し、Webアクセスを高速化した。

 動的コンテンツについては、Amazon S3からは配信できないため、Amazon EC2上に構築したWebサーバーで生成している。Amazon CloudFrontの機能を使って、動的ページのURLの場合はAmazon EC2上のWebサーバーにアクセスさせるようにしている。

 MUJI passportもmuji.comも、いずれもマーケティング部門であるWEB事業部が主導して構築した。情報システム部門との連携が必須となるが、もともと基幹システムを担当していた人材がいるなど、情報システム部門との連携がスムーズにいく体制だったという。