写真●講演する三井化学システム部の松田正太郎氏
写真●講演する三井化学システム部の松田正太郎氏
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 2016年6月1日、九州で初開催のICTの総合展「ITpro EXPO」で、三井化学システム部の松田正太郎氏が「事業に貢献するために情報システムが気をつけること~ハイスピード業務改革の勘どころ」と題して講演。情報システム部の立場や環境が大きく変化した現在、この先も存在意義を示していくために、「100点を狙おうとせず、クラウドサービスを利用して70点の開発を繰り返すことが重要」と持論を述べた。

 松田氏は「企業の情報システムに期待される価値が変わってきた。以前は、決められた業務を効率よくこなすことが目的だった。今は刻々と変化する事業部門のニーズに対応し、マーケティングや新製品開発のスピードアップを実現させなければならない」と説明。そこで問題になっているのが、現場業務の属人化と経営陣の失敗恐怖症だという。

 現場業務の属人化は、Microsoft Excelでの文書作成に代表される。作成能力の高い社員がマクロなどを駆使して様々なシステムを作るため、部署ごとに独自のものが出来上がってしまうこと、担当者が異動すると修復・刷新ができず大混乱する、などの例を挙げた。

 経営陣の失敗恐怖症は、「コストがかかるので仕方がない面もあるが、追加や修正などがあると怒られるため、どうしても守りの姿勢になってしまうし、最初から機能を盛り込みすぎてしまう」(松田氏)。

 そうした現場を少しでも変えようと松田氏が進めているのが、クラウドサービスを利用した開発だ。サイボウズのビジネスアプリ作成プラットフォームであるkintoneをベースに、様々なシステムを構築した。「クラウド業務アプリ構築プラットフォームによる対面型開発だと、現場の発想の基点が目の前で携わっている工程になるし、他部署の社員に機能を見せて反応を見ながら開発できる。現場から感動の声が上がると、うれしくなる」(松田氏)。

 講演では、名刺管理ソフトで作った顧客データベースを組み合わせ、誰がいつどれを参照したかが分かるカタログリストアクセス分析管理システム、ジョイントベンチャーの社員管理システムなどを紹介した。「クラウドは失敗時の損害額が少ない。失敗したらやめたらいい、が本当に通用する世の中になっている。初めから100点満点を目指さず、70点の開発を高速で繰り返すスパイラルアップ型で進めて行きたい」と松田氏は講演を締めくくった。