米Appleがインドで進めている直営店開設計画について、インド当局はAppleに対する外資規制の免除を認めない決定を下したと、米Wall Street Journalなどの海外メディアが現地時間2016年5月26日までに報じた。これにより、Appleの同国における直営店計画は頓挫する可能性が出てきたという。

 Wall Street Journalによると、ある政府当局者は「我々は従来どおりの方針を守る。インドが単なる販売先であるという考えは間違えだ。彼らにはここで製造してもらわなければならない」と述べたという。

 インドには小売業の外資規制があり、日本や米国にあるような直営店「Apple Store」がまだない。Apple Storeのような店舗はインドでは「シングルブランド・リテール」に分類され、その外資比率が51%を超える場合、規制により金額ベースで約30%の製品、部品をインド国内企業から調達しなければならない。ところがAppleの製品は大半が中国で製造され、部品も中国などインド以外の国で作られている。

 一方で、小売業者がインド国内では入手できない最先端の技術を同国に持ち込む場合、インド政府はこの義務の免除を適用することができる。小売業者がこの免除要件に該当するか否かについては、諮問機関が申請内容を詳細に調査するという。

 Wall Street Journalによると今年4月、政府の諮問機関がAppleの直営店事業について、国内調達義務の免除を適用するよう提案したが、最終的に決断を下す外国投資促進委員会(Foreign Investment Promotion Board:FIPB)と財務相がこれを認めなかった。Appleの技術が最先端であるか否かについて、見解の相違があったと政府当局者は話しているという。

 これまでAppleの成長を支えてきた中国市場では、iPhoneの販売が減速している。一方でインドは今後、中国に次ぐ世界第2位のスマートフォン市場になると期待されている。そうした中、Appleは同国への投資を拡大しており、直営店計画はその一環と見られている(関連記事:AppleCEO、インド首相と会談 地図技術の開発拠点など開設へ)。

 Appleは現在、同国の大手・中堅小売業者と提携し「Apple Premium Resellers」というフランチャイズ方式でApple専門店を展開したり、地場小売店の中に「Apple Shop」というコーナーを設け、小売り事業を展開している。ただし、これらの事業主体はあくまでもインド企業で、Appleは製品を輸入して卸すという役割に徹している。

 インド国内で直営店を展開できれば、Appleはブランド力を高められ、わずか3%未満にとどまっているiPhoneのシェアを伸ばせるだろうと、Wall Street Journalは伝えている。