写真●早稲田大学ビジネススクール教授の根来龍之氏(写真:井上 裕康)
写真●早稲田大学ビジネススクール教授の根来龍之氏(写真:井上 裕康)
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 「デジタル化の波は、各業界のレイヤー構造化を進展させる。メーカー純正品ではなく、汎用品を購入者が組み合わせる世界だ。あらゆる業界は、このことを強く認識しておくべきだ」。2016年5月25日、東京・目黒のウェスティンホテル東京で開催した「第3回イノベーターズ会議」(日経BP社 日経ITイノベーターズ主催)。早稲田大学ビジネススクール教授の根来龍之氏は、このように話す(写真)。

 根来氏は、「デジタル化の宿命、産業構造のレイヤー化~デジタルディスラプション時代の生き残り策」というテーマで登壇。イノベーターズ会議の出席者との意見交換を交えながら、今後の産業界を展望した。

 産業のデジタル化には、三つの要素がある。「モジュール化」「ソフトウエア化」「ネットワーク化」である。これらが一気に進むと産業構造のレイヤー化が進展し、業界構造が大きく変容する。これが、根来氏の長期的な見通しだ。

 根来氏は、自動車産業を例にとって説明する。自動車には30~40年前から、車種が異なっても共通化されているプラットフォームと呼ばれる部分が存在する。全世界で標準化しており、効率的な自動車生産が可能になる。プラットフォームの前提となるのが、モジュール化だ。時代の変遷と共に共通部品が多くを占めるようになってきているという。

 モジュール化が最も進んでいる自動車メーカーとして、根来氏は電気自動車の米テスラモーターズを挙げる。ガソリン車のエンジン部品は約1万~3万点に及ぶのに対し、テスラのモーター部品はわずか100点に過ぎないという。それだけシンプルな構造であり、部品の共通化が進めやすいわけだ。「テスラの設計・生産はモジュール化が前提になっている」(根来氏)