米Salesforce.comは2016年5月25日(米国時間)、「Sales Cloud」など同社の主力SaaS(Software as a Services)のITインフラストラクチャーに「Amazon Web Services(AWS)」を採用すると発表した。Salesforceはこれまで、主力SaaSのITインフラには自社データセンターを使用していた。

 SalesforceはAWSを「Preferred Public Cloud Infrastructure Provider(推奨パブリック・クラウド・インフラストラクチャー事業者)」に認定。営業支援サービスであるSales Cloudのほか、コールセンター用サービスの「Service Cloud」、プラットフォームサービスの「App Cloud」、社内情報共有サービスの「Community Cloud」、データ分析サービスの「Analytics Cloud」など、同社の主力サービスの今後のITインフラ拡張にAWSのパブリッククラウドを利用する。

 SalesforceのMarc Benioff会長兼CEOはプレスリリースで「全世界で急速に顧客を増やしている当社のサービスに対応できるような洗練された拡張性の高いエンタープライズ向けのクラウド事業者は、AWS以外に存在しない」と、AWSを選択した理由を説明している。また米Amazon Web ServicesのAndy Jassy CEOは同じプレスリリースで「世界中のエンタープライズやソフトウエアベンダーが、ビジネスクリティカルなアプリケーションをAWSクラウドに移行することで、俊敏さや効率性、コスト削減を実現している」と強調した。

写真●AWSのイベントで講演するAndy Jassy CEO(左)とSalesfoceのイベントで講演するMarc Benioff会長兼CEO
写真●AWSのイベントで講演するAndy Jassy CEO(左)とSalesfoceのイベントで講演するMarc Benioff会長兼CEO
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 Salesforceはこれまでもプラットフォームサービスの「Heroku」や、機械学習を採用した営業支援サービスの「SalesforceIQ」、IoT(Internet of Things)用の「Salesforce IoT Cloud」など、他社から買収したり新しく開発したりしたサービスについては、ITインフラにAWSを採用していた。しかし主力サービスにはこれまでパブリッククラウドを使っていなかった。

利用料金は4年で4億ドルか

 米Forbs誌はSalesforceがAWSに対して、2020年までの4年契約で4億ドルを支払う見込みだと報道している。Salesfoceは5月18日に発表した2016年2~4月の四半期決算報告書で、「2016年4月にインフラストラクチャのサービスに関する4年契約をサードパーティの事業者と締結した。使用料金は17年が7000万ドル、18年が9600万ドル、10年が1億800万ドル、20年が1億2600万ドルである」と述べている。Forbs誌によれば、この「サードパーティの事業者」がAWSなのだという。

 日本法人のセールスフォース・ドットコムは16年4月に、日本における2カ所目のデータセンターとしてNECが関西で運営する施設を利用すると発表したばかり(関連記事:セールスフォースが関西地区に国内第2のDCを開設、国内だけで遠隔地バックアップが可能に)。日本における1カ所目のデータセンターには東京地区にあるNTTコミュニケーションズの施設を利用している。今回の発表でもSalesforceが自社データセンターをAWSに全面的に移行するとは述べていない。

 日本では、Salesfoceがパブリッククラウドではなく自社のデータセンターを利用している点を評価するユーザー企業も少なくない。SalesforceによるAWSの利用がどの程度の範囲に及ぶかが、今後の注目ポイントになりそうだ。