日立製作所は2016年5月18日、2019年3月期を最終年度とする、次期3年間の中期経営計画を発表した。同社が注力してきた社会インフラ事業に、IoT(Internet of Things)を駆使して事業拡大を加速させる。2016年4月1日の構造改革で設置した社内の各BU(ビジネスユニット)を、データ分析に強みを持つソフトウエア製品群「Lumada」で強化する。2019年3月期の目標として、売上高10兆円、営業利益率8%超を掲げる。

写真●東原敏昭 執行役社長兼CEO
写真●東原敏昭 執行役社長兼CEO
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 「3年間、社会イノベーション事業に注力してきたのは間違っていなかった。これから3年間も集中投資を続ける」。同日開かれた会見に臨んだ東原敏昭 執行役社長兼CEO(最高経営責任者)はこう話した(写真)。

 2016年3月期までの中期経営計画を振り返ると、目標としていた売上高10兆円は達成した。2014年3月期からは約6000億円増加。鉄道やSIなどの事業が貢献した。一方、営業利益率7%超などは未達に終わった。2016年3月期の営業利益率は6.3%。「海外の大規模プロジェクトや、情報・通信分野でストレージなどのハード事業が市場変化に対応しきれなかった」(東原CEO)とする。

 既に、売上高10兆円の目標は2016年3月期で達成しているが、日立物流や日立キャピタルなどのグループ会社再編により2017年3月期の連結業績予想は1兆343億円減の9兆円。2019年3月期には新たに1兆円の増収を目指す。

IoTプラットフォーム「Lumada」で社内BUを支援

 東原CEOは「次の3年間に当社が目指す姿は、IoT時代の顧客のパートナー。IoTプラットフォームであるLumadaなどを使って事業を成長させる」と意気込む。

 Lumadaは、同社が2015年5月に買収した米ペンタホ製のデータ分析ソフト「Pentaho」を中心に構成される。OSS(オープンソース・ソフトウエア)で、IoTのセンサーやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など100種類以上のデータ形式に対応し、分析できることが強みだ。

 日立が意識しているのは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)やシーメンスといったIT活用に力を入れる海外勢。特にLumadaの競合として想定されるのは、GEのソフトウエアプラットフォーム「Predix」だ。

 東原氏は「GEやシーメンスは制御機器などのプロダクトに強い企業。一方、当社の強みはITとプロダクトの両方にノウハウを持っていることだ」と優位性を語る。既に2016年5月1日からLumadaは稼働している。まずは社内の各BUが持つ工場や、物流のサプライチェーンに適用し、生産性を向上させる。外販も計画する。

 同日発表した中期経営計画には、顧客に直接サービスを提供する「フロント」を強化することも織り込む。3年間で2万人増やし、13万人まで拡大する。2016年3月期のフロントは11万人。「顧客のより近くで課題を解決できる、SEやコンサルタントなどを増員する」(東原CEO)とした。