ベンチャー企業のリキッドはKDDIと共同で、指紋認証技術を使ってホテルへチェックインするシステムの実証実験を6月に始める。利用者がフロントに設置した読み取り装置に指をかざすと、パスポートを提示することなく本人確認作業が完了する。

 実験は東京・池袋にあるサンシャインシティプリンスホテルに宿泊するインバウンド(訪日客)を対象に実施。指紋データはリキッドが運営するクラウドに保存するため、ホテル側にはサーバー機器などの設備は必要ない。実験では登録した指紋データを基に、周辺にあるヤマダ電機の店舗でクレジットカード決済できる取り組みも検討する。インバウンドが急増する中、滞在中の煩わしさを軽減する仕組みとして実用化を目指す。

 リキッドはタブレットと安価な読み取り装置を組み合わせた、指紋認証システムを開発・販売するベンチャー企業。同社のシステムはハウステンボスが、テーマパーク内で使えるデジタル通貨の本人認証用途に採用するなど、採用が広がっている(関連記事:ハウステンボス、今度は「変な通貨」 指紋で手ぶら決済)。

 実験ではサンシャインシティプリンスホテルにリキッドのシステムを設置。訪日外国人の宿泊客に、利用を薦める。利用に当たっては、まず利用者は読み取り装置に指をかざして指紋データを登録。同時にパスポート情報もスキャナーで読み取って登録しておく。以後はチェックインなどの本人確認の際に、パスポートを提示することなく指をかざすだけで確認作業が終わる。現在、訪日外国人は宿泊施設にチェックインするたびに、パスポートを提示する必要がある。

「指紋認証で旅券提示」、旅館業法の新制度を活用

 リキッドは同実験を実施するに当たり、経済産業省が今年4月に発表した産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」を利用した。これは指紋認証による本人確認をもって、旅館業法における「旅券の提示」とみなすという制度。リキッドは訪日客の利便性向上を念頭に、経産省へ同制度の明文化をはたらきかけてきた。

 リキッドは実験を通じ、指紋認証システムの実効性のほか、指紋を登録することに対する利用者の抵抗感なども検証する。実験期間は11月まで。結果を基に、チェックイン作業のほか店舗でのクレジットカード決済や免税手続きへの応用も検討する。