NECは2016年5月12日、サービスを停止せずにシステム更新を可能とする「システム自動更新AI技術」を開発したと発表した。「システムを構成する部品に依存関係や制約条件を与え、膨大な組み合わせの中から最適な更新手順を自動生成する」(NEC システムプラットフォーム研究所 分散システム基盤TG 主任の黒田貴之氏)。同社は、この技術を運用管理ソフトに組み込み、2017年度の実用化を目指す。

写真1●システム自動更新AI技術の概要
写真1●システム自動更新AI技術の概要
(出所:NEC)
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 更新手順は、「現在状態(更新前)」と「要求状態(更新後)」の構成の差分から導き出す。アプリケーションやミドルウエア、仮想マシンやネットワークといったシステムの構成要素に対しては、あらかじめ依存関係や制約といった条件を定義しておく。「2台あるネットワークスイッチは同時には止めないといった制約を設けることで、無停止でのシステム更新を実現する」(黒田氏)。

写真2●依存性の定義例
写真2●依存性の定義例
(出所:NEC)
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 現在状態から要求状態に移行する手順は一通りではない 。数多くの候補中から、依存関係や無停止といった要件を同時に満たす最適手順を見つけ出すのが、AIプランニング技術である。この技術には“学習”要素は入っていない。NEC システムプラットフォーム研究所 分散システム基盤TG 主幹研究員の登内敏夫氏は「システム停止を避けるため、明示的に制約を与え、必ず制約を満たす手順を出す必要がある。学習アプローチでは通用しないケースもある」と話す。

 こうした技術の背景には、通信や金融サービスなど社会的に重要で止められないシステムが増える一方で、セキュリティパッチのように迅速かつ頻繁にシステム変更したいニーズがある。また、「ソフトウエアデファインド技術の進展で変更作業自体が迅速になってきた分、変更手順を作る時間の長さが健在化してきた」(NEC システムプラットフォーム研究所 分散システム基盤TG 主幹研究員の小林正好氏)。

 同社の試算によれば、サーバー数十台規模の構成変更で、 従来5人日を要していた手順調査や計画立案が、この技術を使い数分から数十分で完了するという。