富士通は2016年5月10日、東京大学と筑波大学が共同運営するスーパーコンピュータシステムを受注したと発表した。次世代Xeon Phi搭載のPCクラスターであり、2016年12月の全系稼働を予定している。総理論演算性能は25PFLOPSで、導入時点で国内最高性能のスーパーコンピュータとなる見込みという。

 システム名は「メニーコア型大規模スーパーコンピュータシステム」で、東京大学と筑波大学が共同で運営する「最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)」の主要計算機として導入する。最大の特徴は、計算資源として米インテルのスーパーコンピュータ用プロセッサー「次世代Intel Xeon Phi Processor」(開発コード名はKnights Landing)を採用したこと。

 次世代Xeon Phiは、60個を超えるメニーコアを搭載した、並列処理用のプロセッサーである(関連記事:米インテル、Xeon Phi最新版「Knights Landing」の詳細を明らかに)。従来のXeon Phiは、ホストとなるXeonサーバーのPCI Expressバスに接続して使うコプロセッサーボードだったが、次世代Xeon Phiは別途CPUを必要とせず単独で動作する。

 Xeon Phiの特徴は、Xeonとの互換性である。PCサーバーを利用したスーパーコンピュータの方式としてはGPUを汎用用途に利用するGPGPUが一般的だが、GPGPUは並列処理を一から開発する必要がある。これに対してXeon Phiでは、Xeon上で動作しているx86コードを動作させることができる。これにより開発生産性が高まる。

 東京大学と筑波大学に納めるシステムは、富士通のPCサーバー「PRIMERGY」で構成したクラスターシステムである。計算ノードとして、次世代Xeon Phi向けに設計した次期モデル8208台を使う。これにログインノードとして51台のPCサーバーを組み合わせる。計算ノード間は、インテルの高速インターコネクトである「Intel Omni-Path Architecture」で接続する。クラスター全体の総理論演算性能は25PFLOPS以上に達する。

 計算ノードは、2Uラックマウント型のシャーシに8ノードを搭載した高密度実装になっている。サーバーは水冷式で、以前と比べて高い温度の水で冷却する温水冷却技術を採用した。冷水を得るための冷却設備への負荷が減るといった利点がある。