米Appleと欧州SAPは2016年5月5日(米国時間)、iPhoneやiPad向け業務アプリケーションの開発で提携したと発表した。バックエンドにSAPのPaaS(Platform as a Service)である「SAP HANA Cloud Platform」を使用するiOS用業務アプリケーションを開発するためのSDK(ソフトウエア開発キット)を提供することなどが主な内容だ。

 両社が提供するSDKの名称は「SAP HANA Cloud Platform SDK for iOS」。このSDKを使うと、iOSで稼働するいわゆる「ネイティブアプリ」に、SAP HANA Cloud Platformと連携する機能を作り込めるようになる。

 例えば同SDKを使うことで、SAPが2015年にリリースした最新ERP(統合基幹業務システム)である「SAP S/4HANA」が管理するデータや業務プロセスにアクセスするiOS向けネイティブアプリが開発できる。開発したアプリでは指紋認証機能の「Touch ID」や「位置情報サービス」「通知」など、iOSが備える全ての機能が利用できるとしている。

写真1●AppleのTim Cook CEO(左)とSAPのBill McDermott CEO(右)
写真1●AppleのTim Cook CEO(左)とSAPのBill McDermott CEO(右)
出所:米Apple、欧州SAP(撮影:Roy Zipstein氏)
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 両社はiOS向けネイティブアプリのUI(ユーザー・インタフェース)を開発するためのデザイン言語「SAP Fiori for iOS」も提供する。「SAP Fiori」はSAPがSAP S/4HANAで採用したクライアントソフトの新しいUIだ。

 SAP Fiori for iOSを使うことで、SAP S/4HANAと同じスタイルのUIを備えたiOS向けネイティブアプリを開発できるようになる。SAPのミドルウエアやアプリケーションを利用するアプリケーション開発者向けの教育プログラム「SAP Academy for iOS」も始める。

 AppleのTim Cook CEO(最高経営責任者)はプレスリリースで「iOSのイノベーションとセキュリティ、SAPの業務ソフトウエアに関する深い専門知識の二つが一緒になることで、エンタープライズにおけるiPhoneとiPadの利用形態が大きく変わる」「SAP向けのアプリケーションを開発している250万人の開発者は、両社が提供する新SDKを使うことによって、SAP HANA Cloud PlatformとiOSデバイスだけが備える優れた機能とを組み合わせたパワフルな(iOS)ネイティブアプリを開発できるようになる」などと、両社の提携の意義を説明した。

 またSAPのBill McDermott CEOはプレスリリースで「SAP HANA Cloud PlatformとSAP S/4HANA、iOSとを組み合わせることで、エンタープライズにとって最も優れたセキュアなモバイルプラットフォームを提供できるようになる。ユーザーがいつどこで仕事をしていたとしても、最新のデータが利用できるようになる」と、述べている。

 Appleは近年、iPhoneやiPadを企業顧客に売り込むために、大手ITベンダーとの提携関係を増やしている。Appleは2014年7月に米IBMと提携したほか、2015年9月には米Cisco Systemsと提携している。SAPとの提携はこれらに続くものとなる。