米EMCは2016年5月2日(米国時間)、同日から米ラスベガスで開催した「EMC World 2016」で、中堅企業向けオールフラッシュアレイ「Unity」やストレージクラウドの「Virtustream Storage Cloud」、同社のストレージの状況を一覧できるダッシュボード「MyService360」などを発表した。

 EMC World 2016では、米Dellが2016年10月までにEMCを買収した後は、Dellの社名が「Dell Technologies」に変わり、EMCはサーバーやストレージなどのサブブランド「Dell EMC」の一部となることが発表されている(関連記事:EMC買収後の社名は「Dell Technologies」、「規模を追求する」とDell CEO)。もっとも現時点では買収は行われていない。そのため今回のEMC World 2016では、従来と同様にEMCの新製品の発表だけが行われ、Dellによる買収後の製品ラインナップなどに関する発表は無かった。

 オールフラッシュアレイの新製品であるUnity(写真1)は、高さ2Uのラックマウント型の筐体1台で最大80テラバイト(TB)のフラッシュストレージを搭載できる。価格は1万8000ドルからで、中小~中堅企業向けの製品と位置付けている。

写真1●EMC World 2016で発表した「Unity」
写真1●EMC World 2016で発表した「Unity」
[画像のクリックで拡大表示]

 EMCの既存のオールフラッシュアレイである「XtreamIO」や「VMAX All Flash」「DSSD D5」は大企業向けの製品であり、Unityの価格はこれらの製品に比べて数分の一の水準だとしている。UnityのIO性能は最大30万IO/秒(30万IOPS)で、EMCの既存中堅企業向けストレージである「VNX」ブランドのオールフラッシュアレイに比べて3倍以上の性能を実現した。

 Virtustream Storage Cloudはいわゆる「オブジェクトストレージ」のクラウドサービスであり、「REST API」を使ってデータを入出力する。サービスはEMCが2015年に買収した子会社である米Virtustreamが提供する。最大で数エクサバイトのデータが保存できるという「Webスケール」の拡張性を備える一方で、エンタープライズ向けのサービスとも位置付けており、データ耐久性は「99.99999999999%(9が13個続く)」としている。REST APIは「Amazon S3」との互換性がある。

 EMCグループでは現在、米VMwareとVirtustreamという二つの子会社がそれぞれ独自にパブリッククラウドのサービスを提供しているが、EMCの「本命」はVirtustreamとなる。VMwareの「vCloud Air」では独自のオブジェクトストレージを提供せず、米GoogleのオブジェクトストレージのサービスをOEM供給していた。それに対してVirtustreamでは独自のサービスを提供する。またEMC World 2016では、EMC子会社の米Pivotal Softwareが提供するPaaS(Platform as a Service)の「Pivotal Cloud Foundry」が、Virtustreamのパブリッククラウドで利用可能になるとの発表もあった(写真2)。

写真2●Virtustreamで「Pivotal Cloud Foundry」が稼働可能になると示したスライド
写真2●Virtustreamで「Pivotal Cloud Foundry」が稼働可能になると示したスライド
[画像のクリックで拡大表示]

 WebベースのダッシュボードのサービスであるMyService360は、ユーザー企業が使用するEMC製ストレージ製品の稼働状況などを閲覧するためのもの。ストレージの稼働状況を分析して、ユーザー企業がどのような対応をすべきかをアドバイスする分析機能なども備えている。MyService360は、EMC製ストレージの有償サポートサービスを既に利用しているユーザー企業であれば、追加料金無しに利用できる。